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──────Archers Side────── 真冬の夜だというのにそう寒くは無い風に晒されながら大橋を渡り切り隣町までやって来た。 「とりあえずここまでは特に異状は見受けられなかったか」 「だからワシはそう言っただろうが、それをマスターが───」 「お前の意見なんか訊いてない」 間桐はアーチャーの言葉をすっぱりと切り捨てる。 「チッ。まったくうちのマスター様は───ッ!??どけ!マスターッ!!!!」 アーチャーはそう叫ぶと即座に実体化し間桐の身体をむんずと掴むとそのまま後方に投げ飛ばした。 かなり勢い良く放り投げられた間桐は体を地面に打ち付けながらそのままゴロゴロと転がる。 「がっ!き、貴様ぁ、サーヴァントの癖に…マスター、相手になに、を───!!」 ────瞬間。さっきまで間桐が居た周囲が吹き飛んだ。 轟音と土塊が八方に飛び散る。 「おわぁああああああああああああああ!!!?」 悲鳴を上げる間桐の前にアーチャーが爆発から庇う様に立っていた。 「ふうぅぅ……危ないにも程があるわ、かなり紙一重だったぞ。 しかしなんつー魔術じゃ……こんなもんをなんの気配も感じさせないままぶっ放してくるとなると……敵はキャスターか?」 突然の奇襲にアーチャーは忌々し気にぼやく。 「キャ、キャスターだと?」 困惑するマスターに今の状況を教えてやる。 「よかったなマスター。早速念願の 異 常 が見つかったぞ?」 コツコツと靴音を鳴らしながらその敵は悠然とアーチャー達の前に現れた。 「なるほど。君が御三家の一角である間桐家の魔術師か。ふん、やはり落ちぶれてるだけあって脆弱だな」 その男は現れると開口一番に間桐に対して嘲笑を浮かべた。 「なんだとお前……?」 挑発された間桐の声にじわりと殺気が篭る。 「ふん。キャスター奴は私が相手をする。お前は敵のサーヴァントの相手をしろ」 「わかりましたマスター」 簡素なローブを着たサーヴァントがマスターの声に応え前に出る。 「アーチャー!判っているな?」 「マスターに言われるまでも無いわい。しかし、ある意味幸運だぞ。いきなり最弱のサーヴァントに当たるとは」 間桐に促されるまでもなくアーチャーは既に臨戦態勢に入っていた。 「おやおや。やはり最弱とされるキャスタークラスでは舐められてしまうものですね。 良いでしょう、その驕り後悔してもらいます───!」 キャスターがその場で魔道書を開く。 同時にソフィアリは素早くその場から離脱しながら詠唱を開始する。 キャスターから貰った魔術刻印がソフィアリには本来無い筈の魔術を与える。 次の瞬間に二人の魔術師が発動させた肌を飴のように溶かす程の熱風が間桐に向かって叩きつけられた! 「───無駄じゃわ!」 敵の魔術攻撃と同時に素早く間桐の前に躍り出たアーチャーが熱風を特に防御もしようとせずに遮断する。 二人の魔術はアーチャーの持つ強力な対魔力によって無効化された。 弓兵の右手には既に弓と言うには少々大き過ぎる巨大な弩が装備してある。 そしてアーチャーはそのまま一気にキャスターとの間合いを詰めるために突進をかけた。 「むっ!?やはり見た目通りCランク以上の対魔力持ちでしたね!ならば行きなさい我が七体の───!」 キャスターの号令と共に七体の小人が踊り出た。 首、心臓、目、足を狙ったコンビネーションがアーチャーを襲う。 「うお!!なんじゃ!?」 キャスターへの突進を一旦止めて小人たちの七連続攻撃の回避に専念する。 ”人形……あのキャスターは人形師か? となるとアレはキャスターの魔力を帯びていると考えるのが妥当か……ならサーヴァント相手でも干渉出来るな。” 冷静に分析しながらキャスターに狙いを定めて右手に持った弓の引き金を引く。 打ち出される巨大な二本の牙。 通常の弓矢の規格とは明らかに違う大型の矢が唸りを上げながら獲物に向かって直進する。 だがそれをキャスターはまるで氷を滑るような動きでかわした。 続け様にもう三発射撃する。 再びキャスターは滑るような動きで回避してゆく。 しかも今度はそのまま移動し始めた。 「あの妙な動き……何かの魔術を行使しているのか?ぬおわ!」 キャスターの奇妙な動きに気を取られている隙を突いて一体の人形が手に持った凶器を叩き付けてくる。 それを左の手甲でガッチリと受け止め、右手の引き金を人形の小さな体に向かって引く。 巨大な矢に貫かれぶっ飛ぶ半デコ人形の体。 真っ二つにされて地面に転がった人形はそのまま消滅した。 「ワハハハ!所詮は雑兵よワシの敵ではないわ」 そのまま距離を取ろうとするキャスターを追って移動する。 ”───本来ならこんな見え見えの戦力分断の作戦なんかに乗らんでこの場に残ってキャスターのマスターを殺したいところじゃが……” アーチャーに突然雨雲も無いのにどんでもない落雷が降り注いだ! 「ごわっ!!?今のはかなりびっくりしたぞ糞っ!!」 ”───これがあるからな。 下手にキャスターのマスターに近寄ればいくらワシが無事でもうちのワカメマスターまで巻き込まれて死にかねん。” キャスターはソフィアリから離れながらアーチャーより射られる矢をヒラヒラと回避する。 「やれやれ今のも大した手応え無しですか。 ───普通ならば粉々になる威力がある大魔術クラスの干渉魔術ですら殆ど傷付かないとは厄介な……」 キャスターは敵のあまりに出鱈目な対魔能力に若干呆れたような声を吐き出した。 先ほどからキャスターが放っている魔術攻撃は高ランクの対魔力を備えているアーチャーには殆ど通用していなかった。 「ならこれならどうです?」 くすりと忍び笑いを浮かべたキャスターは『世界の書』を開いた状態で別の魔術を発動させる。 「連動、高速可動───性能強化」 残り六体の人形に連携を組ませ、さらに魔術で人形たちのスピードやパワーなどの性能を上げてやる。 「さあ、行きなさい!」 キャスターが人形達へ向かって吼えた───! 「ぬ?突然なんだこいつら!?」 アーチャーの声に困惑の色が浮かぶ。 それもそのはず、あしらう程度に相手をしてやっていた人形の動きが突如変わったのだ。 先よりも鋭く、先よりもこちらの行動の終わりを狙って、速く、正確に動いてくる! しかも人形たちの攻撃の迫力も先程とは段違いである。 いくらアーチャーが硬い部類だと言ってもまともに喰らえば相応の損傷が待っている事は容易に想像できる。 アーチャーは人形の攻撃を無駄の少ない動作で回避と防御をしながら、手にした弩の矢を射ち込むのだが───上手く当たらない。 「チッ!チョロチョロと!防御力は大して無い癖に素早さだけはサーヴァント並にありおる。 ───キャスターめぇ、何か人形に補助をしておるなぁ!!」 アーチャーは苛立ちながら狙いも付けずに今度は引き金を引きっ放しにする。 するとシュカカカカカカカカカカカカカカ!という風切り音と共に大量の矢が乱射された。 大きな渦巻きを描く様に撃たれた矢は回避し損ねた一番小さな人形の頭を吹き飛ばし、残りは全弾空を切った。 これで残り五体……! 「よし今のうちに本体を先に────ヴおっ!?」 突如眼前で起こる爆発音。 アーチャーが気を逸らした隙にキャスターが魔術で攻撃を加えたのだ。 あのキャスターは小癪にも自身の手駒を上手く使いながら自分もしっかりと戦闘に参加していた。 人形が作った隙を突き、人形に出来た隙をカバーするように、とんでもない速さで魔術行使してくる。 だが幸いな事に対魔力Bを誇るアーチャーには魔術による攻撃はよほどのものじゃ無い限りまず傷付かない。 牽制にキャスターに五発ほど矢をぶっ放つ。 再び弩がキャスターに牙を剥く。 だがしかし、やはり滑るような動きでするりと回避していくキャスター。 「むぅ完全に暖簾に腕押ししとる……やはり出来るだけ近づかんと駄目か」 そう判断するするとアーチャーは一気にキャスターへ向かって疾走した。 「っ!?」 敵が動揺した気配が感じ取れる。 ───行ける!このまま一気に! キャスターまでの距離を一気に詰めようとしたその時。 「どふっ!??」 鎧の上からにも関わらず背中に強い衝撃を受けた。 背後の少し離れた位置には赤い人形と黒い羽を生やした黒い人形。 あの距離から攻撃したという事はあの二体は飛び道具も備えているらしい。 「お、う……痛ぅぅおのれこの玩具め!効いたぞ畜生!」 紅い人形の左肩を目掛けて矢を放つ。 撃ち出される銀星は真っ直ぐに紅い人形目掛けて飛んでいく。 人形はその程度の攻撃避ける事なぞ容易いと言わんばかりに右方向へ跳躍した。 ────が、その跳躍先には待っていました。とばかりにもう一発の銀星が既に放たれていた。 片腕がもげて爆散する紅い人形。 「ビンゴ」 これであと四体! 紅い人形を仕留めると、身構えている黒い方は相手にせず再びキャスターへ走り寄る。 そしてそのまま後ろを見ずに矢を撃つ。 背後から矢が何かに着弾する音と、何かが地面を転がる音が聞こえた。 これで残り三体。 「よし上手くいったわ」 やはり睨んだ通りだった。キャスターを狙えば人形は主の護衛に回る。 となると当然あの黒い人形は無防備な背中を見せたアーチャーに真っ直ぐ襲い掛かり。 ───そのまま弓兵の作戦通り鮮やかにジャンクにされた。 アーチャーは一切後方の音には振り向かずにキャスターへ突進する。 ─────あと少しで至近距離まで入れる! 「光刃よ───!」 キャスターも一小節の詠唱だけで強力な魔術を発動させ応戦する。 目が眩むほどの閃光と共にキャスターの方から飛んで来る光の弾。 バチン!と着弾するが対魔力の阻害によりダメージは無し。 しかし、若干走る勢いが一瞬だけだが落ちた。 構わず右手の弓を構える。 「手こずらせおって、喰らえいキャスター!!!」 人指し指が引き金を強く引き絞る。 大量に撃ち出される矢の嵐。 だが、キャスターはアーチャーが駆け寄る勢いを落としたその一瞬の隙をついて霧となっていた。 霧散するキャスターの肉体。 一発もまともに命中せずに悉く空を切る矢の嵐。 「くぬぅぅぅぅうううう!惜し過ぎるっっ!!」 悔しがりながらも素早く敵の位置をその猛禽類のような両目で探る。 居た……左方30m先にキャスターは現れている。 「…………今の霧化といい、先程から使っている大魔術といい、どうも殆ど詠唱も無しに使用している気がする。 というより殆どシングルアクションに迫るほどの速さ……。それにあの魔道書、物凄い魔力を放っているが……まさかとは思うが、宝具?」 いやしかし流石に序盤も序盤でいきなり宝具を使用してくるサーヴァントなど存在するのか? 宝具を使用するという事はそのまま持ち主の真名へと繋がる致命的な情報となり得る。 故にサーヴァントは滅多な事では宝具を使用しない。 使用しないのだが───ならあの魔道書はなんじゃ……? アーチャーの困惑をある程度離れた場所でキャスターはほくそ笑む。 ───やはりこの手にある魔道書が気になりますか。 まあ当然ですね、何せ宝具を使用するという事は真名を明かすという事と同義ですからね。 「フフ……でもまぁ、それも無駄なことなのですけどね」 決して言葉には出さずに口の中だけで呟く。 そう無駄だ。なにせこれは彼のマスターと共に考えた作戦なのだ。 序盤から他の組は伏せておくであろう切り札たる宝具を積極的に使用して他のマスター達より優位に立つ戦略。 普通の英雄ならまず出来ない戦略だがこのクリスチャン・ローゼンクロイツはそれが可能な英雄であった。 ”元々ボクは英雄としての力を持ち始めた辺りからの伝承が全くと言っていい程残っていないんですよ” それがキャスターがマスターであるソフィアリに告げた言葉。 中世の世に存在したというわずかな記録と噂以外は正体不明とされる魔術師の英雄。 それがこの聖杯戦争で彼に与えられた唯一の強み。 英雄は自身の伝承を紐解かれる事によりその特性や能力そして弱点を露呈する。 だが───その伝承自体が不透明なものならば仮に真名が明るみにされてもデメリットは殆ど無い────! おまけに彼の宝具の能力は至ってシンプルだ。 『世界の書』に記された世界中の魔術刻印に記録された魔術がシングルアクションで使える。 ただそれだけ。 仮にローゼンクロイツ自身が習得したの魔術が判明したところでこの世界の書があればそれすらも簡単にカバーできる。 「とは言ってもやはり高ランクの対魔力スキル持ちには分が悪すぎますね……せめてCランク程度の対魔力ならまだ何とかなったものを」 苦虫を噛んだ様な声が漏れる。 そう、どんなに序盤からの宝具使用による優位を得ても相性という根本的な問題がある。 恐らくあのアーチャーの対魔力はBランク相当。並の大魔術や儀礼呪法程度じゃまず傷付かないだろう。 彼にはAランク相当の大魔術を喰らわせないと有効打にはならないはずだ。 おまけに喰らわせたとしても単発では致命傷にはならない筈だ。二発三発と立て続けに喰らわせる必要がある。 「人形はあと三体。やはり陣地外での単体勝負は圧倒的に不利ですか」 世界の書のページをめくる。 こちらの攻撃が通用しないのならば───相手の攻撃を利用するまで。 キャスターがアーチャーに対して仕掛けようとしたその時───。 マスターたちの居る方向から火柱と爆発音が轟いた。 「……!!?」 「────なっ!!!?」 驚愕は一体どちらの方が大きかったのか。 二人のサーヴァントは音を聞きつけるやいなや、その意味を即座に察知しマスターの元へ疾走する。 「チッ、あのヘタレワカメがっ!だから言わんこっちゃないうつけ者め!」 アーチャーを焦燥感が襲う。 これはマズイ。自分のものとは別のラインが危険信号を出している。 その警報がなんなのか、サーヴァントとマスターとの繋がりで十分過ぎるほどに理解できた。 今───自分のマスターがかなりヤバい状態にある!! 「アーチャー、そう簡単には貴方を行かせません!」 マスターの許へ急ぐアーチャーにキャスターとその人形が並走する。 足の速さでは向こうの方が上だ。 「く!!?」 横合いから振り下ろされる凶器。 「邪魔を……するなこのゴミ屑ども!!」 それを左の手甲で逸らし、怒声と共に右の手甲で裏拳を人形へお見舞いする。 随分遠くまで吹き飛んでいくお人形。 真横でキャスターが唱える行動阻害の魔術を対魔力に物言わせて完全に無視しマスターの許へ急ぐ。 勿論足の速いキャスターにしっかり牽制に矢をたらふく撃ち込んでやるのも忘れない。 まず当たらんだろうがキャスターの足を緩める時間稼ぎにはなる。 ────居た! 倒れ伏した間桐に丁度ソフィアリが止めを刺そうと手を伸ばしているところだった。 「させぬわ!」 アーチャーは自身の前方と後方にいるキャスターとソフィアリに手早く狙いを付けると引き金を引いた。 「アーチャーなぜ此処にっ!!!!?きさま!!!??」 「マスター!!離れなさい───うぐっ!!!!?」 弩の射出と同時にキャスターは自分のマスターの周囲に防壁を展開する。 防壁に阻まれ弾かれる矢。 ソフィアリはキャスターが咄嗟に張った防壁で守られた。 しかしキャスターの身体にはアーチャーの矢が見事に穿たれていた。 今の攻防でキャスターが手負いになったのを気配で察すると、アーチャーは間桐の傍まで駆け寄りながらソフィアリの心臓へ目掛けもう一発弩を撃つ。 「っく────!!………ぶっっごっ!!!???」 キャスターの声に反応して身体を捻りながら回避行動を始めていたソフィアリの脇腹に矢が突き刺さる。 否、─────それは突き刺さったなどというレベルではなく脇腹を 吹 き 飛 ば し た 。 ソフィアリは受けた衝撃で数m後方に転がりそのままピクピクと痙攣していた。 「咄嗟に回避動作を取られたせいで心臓は外されたか……だが」 だがこれでキャスターをマスターの傷の治療の為に足止めさせられる筈だ。 矢が大きいため、ソフィアリの脇腹にはコブシ大ほどの大きさの風穴が開いていた。 流石にあの傷の大きさでは『復元』レベルの治癒魔術でもしない限りは治癒出来まい。 死に掛けの敵マスターを前にして撤退するのは遺憾ではあるが、なにぶんこちらのマスターも死に掛けている。 これ以上敵に構っている余裕は一秒だって有りはしない状態だ。 「マスター。問答無用だ、離脱するぞ。ここじゃ治療もまともに出来ん」 しかし離脱してどうする? アーチャーには治癒魔術の心得など無い。 どう治療すればいい……? ”いや───もしかするとあの爺さんならば治療出来るかもしれぬな。” 即座にマスターの受けたダメージを回復させられそうな人物を頭の中に弾き出すと、 アーチャーは間桐を抱え上げそのまま臓碩のいる間桐邸を目指して撤退した。 ◇ ◇ 間桐を肩に担いだまま大橋を渡り、こちら側(深山)の町を駆け抜け、間桐邸に続く坂を一気に駆け上る。 マスターが瀕死になった為、今のアーチャーには魔力提供が一切行われていなかったがクラススキルの『単独行動』がその威力を存分に発揮していた。 おかげで魔力不足のせいでヘロヘロになる事もない。 おまけに暁幸なことに敵マスターと遭遇することも無かった。 間桐邸の敷地内に駆け込むとそのまま玄関をブチ破りそうなの勢いで開ける。 「おい爺さん!!いるんじゃろう!?マスターがヤバいなんとかせい!」 そして洋館全体に聞えんばかりの大声で臓碩を呼ぶ。 すると目的の爺さんは建物の影から湧き出たように突然現れた。 「なんじゃ騒々しい。む、アーチャーかどうした?」 「なんじゃじゃないわい。爺さんこのワカメ小僧が死にかけてるから何とかしてくれ。 正直マスターが死んだところで弓兵のワシならばそこまで致命的では無いが流石に今更新しいマスターを見繕うのも面倒だ」 アーチャーの切れ長の目が不機嫌そうに細まる。 「ククク、こやつに愛着でも湧いたかアーチャー?」 「つまらん話は良いから治療できるんならさっさとせんかい。こいつ長くは持たんぞ? 助ける気が無いのならさっさと申告するんじゃな、今から他の寄り代を探しに行く」 爺さんの下らない冗談にいかにも面倒臭そうにその長髪を掻き揚げる。 「わかっておるわ、地下へ連れて来るが良い」 臓碩はそれだけ告げるとまた闇に溶ける様に姿を掻き消した。 「げえ地下か……あそこ出来れば行きたくないんだよなあ。臭いったらありゃしないわ」 文句を言いつつも直ぐにアーチャーは臓碩の言葉通りに間桐を地下へ運び込んだ。 「で、どうするんじゃ?なんかもう息の根が止まりかけとるんだが」 全く洒落にはなってないが、ぬわっはっはっはー!ととりあえず笑い飛ばしておく。 割と大雑把な気質のアーチャーは辛気臭いのは好きではないのだ。 「まったくもって情けない限りじゃのう。序盤も序盤でいきなり取って置きを使う羽目になろうとはな。このたわけが」 ぼやきながら臓碩は一匹の蟲を間桐の口の中に杖で押し込んだ。 ニュルニュルと間桐の口から腹の中へ入っていく淫猥な形をした蟲。 「…………………うわぁ…マスターご愁傷様……そんなイチモツみたいな形の気色悪い蟲を銜えさせられるとは……同じ男として同情するぞ…」 アーチャーは心底同情したようにお経のような呪文を唱えている。 「……ところで爺さん、なんじゃ今のアレは?」 「儂が今回聖杯戦争のために用意した切り札だ。 心臓さえ動いていればとりあえず干乾び掛けていようが全身骨折大火傷だろうが持ち直せる程の…処女の血で練り上げた魔力の塊よ」 そう説明する臓碩の声は明らかに不機嫌だった。 さっきまで蚊の鳴くように息をしていた間桐が今では苦しそうに呻き声を上げている。 ……あの卑猥なアレの形をしたあれって大丈夫なものなんだろうか? いやどう考えてもヤバいな。まず形がヤバい。いろんな意味で有り得ない。 アレで持ち直すような奴は変態に違いないわ。 などとしょうもない事を考えていると、しばらくしてその苦しげな呼吸が徐々に収まりつつあった。 心証的にいまいち信じたくはないがどうもあの男根蟲で持ち直したらしい。 なるほど、ワシのマスターは変態じゃったのか。個人的にはアレを食わされるくらいならば潔く死ぬが─────。 アーチャーが内心少しアレの効果に疑問を持ち始めた頃、臓碩が質問をしてきた。 「何があった?」 「あ~ついさっきキャスターと一戦やって来たんじゃが、その時に炎でも使う敵マスターと戦って負けたのだろう」 まあワシはキャスターの相手をしとったから直接は見とらんが。と付け加える。 「火炎使いか。蟲使いの儂らマキリの業にとって相性悪い敵とまともに遣り合おうとするとは……使えぬ孫じゃな」 臓碩はその使えぬ孫を横目で見ながら溜息をついている。 「…………ならば何故あの大量の魔力を蓄えた蟲を使った?切り札なのじゃろう? ワシはてっきり貴様はマスターを見限ると思っておったがな」 「孫に期待は無くともそのサーヴァントであるアン・ズオン・ウォンにはあるからのう。 不出来な孫はともかくアーチャーは大事という事だ」 アーチャーの正直な感想にマキリの老人はそう答えると陰湿そうな忍び笑いを漏らした。 だがその賛辞を受けた当の本人はというと。 「あ~……今の台詞がこんな陰湿な爺じゃなくて、むちむちな色香を放つ綺麗なねえちゃんなら文句無しだったのに……はぁ」 などとこの見た目年若そうなアーチャーは、相変わらずの調子でオッサン臭い台詞を吐きながら深く溜息をついていた。 ──────Fighters Side────── 夜。遠坂は寝静まった隣町を霊体化したファイターと共に探索していた。 家を出てから既に結構な時間が過ぎているが特に成果は上がっていない。 今日は暖かい冬木の冬にしては寒い。 まるで夜に蠢いているナニかへの畏怖で先程まで暖かかった町の熱が急に冷めたみたいだった。 「ここも特に異常はなさそうだな、マスター」 「………」 「で、次はどうする?町の中心部はもう見たわけだから大橋の方へ戻ってみるのかな?」 「………………」 「ん?……遠坂殿?」 「……………………………」 遠坂はファイターの言葉には答えずに何かを探すように周囲をキョロキョロと見ていた。 「マスター?」 やはり遠坂はファイターの呼びかけに反応を示さない。 「………ふぅ、マスター!」 「───ぉ!!?な、なんだ?ファイター」 「なんだではない。遠坂殿の方こそどうしたというのだ。私の声も聞えていないほど呆っとするなぞ遠坂殿らしくもない」 少し呆れてマスターを諫める。戦場で呆けるなんて本当に彼らしくない行動だ。 「……ファイター、一つ訊ねるが君は何か視線を感じないか?」 ボソッと呟かれた言葉に今度はファイターの神経が鋭敏になる番だった。 ファイターは自身を張り詰めさせ周囲の気配を探る。 「─────」 だが手応えらしい手応えは無い。 「────いや。私では嗅ぎ取れない。となると……」 「サーヴァントの気配ではなく───マスターの視線、か?」 恐らく。とファイターも相槌を打つ。 「マスター、視線を感じ始めたのはいつ頃に?」 「確か、こちらの町に入ってしばらくしてからだ。遠坂の家が在る深山の町にいる間は感じなかった筈だからな」 「という事はこちら側の町に根を張っているマスターが居ると?」 「多分な。しかも恐らくそのマスターは複数の駒持ちだ」 「複数か───フッ、これはまたいきなり面倒臭そうな輩に引っ掛かったものだ」 つまらなそうにファイターは零す。 「ファイターが視線を感じない点と、私が家から『魔力殺し』を持ってきたという点を考えればコレらの違和感は魔術師の魔力に反応したキャスターや敵マスターの網ではなさそうだな。 私自身も他のマスターの網に対しては細心の注意を払っていたから恐らく引っ掛かってはいない筈だ」 安全な陣地である自宅から外に出た遠坂はその分敵に対しての警戒をしっかり行っていた。 「しかも令呪が全く反応しないときている……まさかマスターじゃない、のか?」 「しかしマスターではないような者が何故そんなことを?」 「判らない。だが現状だとそれが一番解答としてはしっくりくる……これはどういうことだ?」 ────困惑する遠坂の予想はほぼ正解だった。 ───────Interlude ─────── 遠坂たちから200m以上離れた地点。 その人影は存在した。 「───標的を捕捉。既に発見より15分は追跡しているがこちらの姿を見つかった様子はない。 恐らくサーヴァントを霊体化して傍に控えさせていると思われるため、このまま監査aは監視を続けると監査dへ報告」 「伝達b了解───」 そういうと一人の人影は闇の中を音も無く駆けて行った。 ───彼らは聖堂教会よりゲドゥ牧師と共に派遣された構成員たちだ。 魔術師では無い彼らは魔術の力には頼らず鍛え抜いた己の肉体を頼りとする。 ライダーのマスターでもある牧師が彼らに与えた命令はこうだった。 ”各自深夜に潜伏した町で何かを探すように徘徊する人間を見かけた場合は、絶対に手を出さずにしばらく追跡し観察しろ。 この時期の深夜にそんな行動をする人間は魔術師の可能性が非常に高い” その命令に従い今もこうして遠坂を静かに監視している。 標的に張り付く監視員と、監視員が得た情報を他の構成員や牧師へと伝える連絡員に分かれて行動する。 そういうものに対して訓練を受けている人間ならともかく、そういう事には疎い魔術師ではまず彼らを見つけられない。 そしてもし標的が全く無関係のハズレだったとしても人手が十分にある彼らには大したデメリットは無い。 それが牧師が出した聖杯戦争での戦略だった。 そうして彼らはじっと監視を続ける。 教会の命令である聖杯の調査の成功の為に───。 ───────Interlude out─────── 遠坂達は何者からかの視線を感じながらの探索を続ける。 「遠坂殿。いっそ周辺を調査・索敵できるような魔術を使って確認をしてみるのは?」 主人の心理状態を察しファイターが助言した。 「そうしたいところだがまだ駄目だ。私の気のせいの可能性もまだある。 がそれよりも、もしコレらがただ私に対する疑惑からの監視だった場合は魔術行使は明らかに失策だ。 せっかく魔力殺しで魔力を遮断しているのに自分たちの情報をこちらから明かす羽目になる……」 夜の隣町を進みながら遠坂は冷静に状況の把握に努めている。 ファイターは黙ってマスターの采配に従うことにした。 「……一旦帰還する。恐らくだがこの視線はこちらの町を監視するモノの筈だ。ならば───大橋までは追っては来くるまい」 遠坂の提案にファイターは頷きで返す。 「同感だ、マスター。仕掛けるのなら何らかの策を用意してからの方が良い。それに何も収穫が無かったわけではないからな」 そう一応収穫はあった。隣町には正体不明のナニカが居る可能性がある事が判ったのだ。 方針を決めたら行動は迅速に。 ファイターたちは素早く大橋を目指した。 そして、その場所に差し掛かった───。 「遠坂殿ここは───?」 「少し前に間違いなく、戦闘があったようだな……」 大気中に残る強烈な魔力の残滓。焦げ付いた草花。抉られた大地。そして血痕。 「「キャスターか……?」」 二人の声が重なる。 少なくともこの強烈な気配の残滓は並の魔術師とは思えない。 二人で慎重に辺りを調べていく。 そうして周辺を調べているとファイターは妙なモノを見つけた。 「ん?これは────羽に足?……いや虫、か?」 地面にナニかが焼かれた残骸が残っていた。 「何か見つけたのかファイター」 少し離れた所を調べていた遠坂がファイターの方へ歩み寄ってくる。 「遠坂殿これはなんだと思う?」 そう言いながら地面に残ったコレを指差す。 「───────焼かれた蟲、の残骸か?」 「少し大きかったから気になったがやはり虫か。大方飛んでいたところを戦闘に巻き込まれたというところか……。 いやすまない、つまらないものだっ───」 「いや。でかしたぞファイター」 遠坂が口元に笑みを浮かべていた。 「ん、遠坂殿?」 「いやこれはアタリだよ。なるほど、となるとここで戦闘したのは間桐のマスターか。 確かマキリのご老輩は際立った蟲使いだ。ならば彼の弟子もその蟲の業を習得していたとしても不思議でもなんでもない」 「マキリ───確か遠坂家と同じく御三家の一角だったか」 「ああ。だが今あの家の後継者にはここまで強力な魔力は無い。 となるとこの場所にはキャスターのサーヴァントか間桐よりも数段格上のマスターが居た事になるな。いやあるいは両方かもしれん」 「うむ、やはり遠坂殿が自邸で見つけた通り動きがあったか」 「そうだな。いやファイター、君の助言を聞いていて良かったようだ。流石に家に居たのではこの情報は手に入らなかった」 「何を言う。私の助言を聞くと判断したのはあくまで遠坂殿自身だ。ならばこの結果は遠坂殿自身が招き寄せたものだ」 やはりこの忠実な従者は控え目に主の賞賛を受け止めるのだった。 一頻りその場所を調べた後は、先程の監視らしきの気配の事も考慮して手早く大橋へ移動する。 「恐らく間桐は負けたな」 「なぜそう思うのだ?」 「簡単なことだ。余程の事でもない限り蟲使いでは炎使いには勝てない。がそれ以前の問題として間桐の相手は恐らく格上だ」 「なるほど───強い者が勝負に勝つのはいつの世も同じであったか」 二人でこちらの町と深山の町を結ぶ大橋を渡って行く。 隣町で感じた視線は今は全く感じない。 やはりあの視線は気のせいだったのだろうか───? そうして大橋を何事もなく無事に渡り切り、ファイター達は河口側の広場までやってきた。 「さて、遠坂殿これからどうす───静かに!」 ファイターは突如耳に入ってきた異音に反応して耳を澄ませる。 一方遠坂はファイターの意図を汲み素早く臨戦態勢に入った。 明らかに聞き覚えのある音が遠くから近づいてくる。 そうこれは文字で表現すればパカラッ!パカラッ!やパカポコ!パカポコ!という類の音だ。 「──────これは、馬蹄の音?」 どんどん大きくなっていく快音。 それに伴ないこちらに真っ直ぐ近づいてくる強力な魔力の気配。 そして馬の嘶きと共についにその音の正体がファイターたちの目の前に現れた───! ズザザザーと砂埃を巻き上げながら豪奢な馬車が停止する。 馬車の手綱を手繰っているのはどう見ても騎士───否、サーヴァント!? 騎士が御者台から飛び降りる。 「いや開幕に間に合って良かったぜ。そうだろうお二人さん?」 と、に騎士が明るい口調でこちらへ声をかけてくる。 だが緩んだ表情とは裏腹に放たれた殺気は張り詰めていた。 霊体になっているファイターにも気付いているとなると間違いなくサーヴァントである。 「おっとそうだ。マスターを下ろさないと」 そう言いながら男は馬車の扉を開けて下車するのに手を差し出していた。 「セイバー、随分乱暴な運転ね」 「うっ、……面目無い。でも急いでいんだからしょうがないじゃないか!あ、お手をどうぞ」 ……なんかその騎士は主らしい女に怒られながら彼女を馬車から降ろしていた。 ファイターは実体化し遠坂を庇うように前に立つ。 「マスター、彼らは?」 「………あの今から戦場に向かうものとは考えられないような無駄に派手な馬車はどう考えてもアインツベルンだな」 一方の遠坂は騎士の方をじっと見やる。 マスターが持つ透視能力で見た騎士は───世界でも希少価値が非常に高い輝石に見えた。 奥歯を噛み締める。なんて高ランクの能力値だ……。 ランク変換しても魔力値以外はBランク越え相当の能力値、だと!!? あのサーヴァントの能力値が、筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A+ 一方のファイターの能力値が、筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A ───なんてことだ。あの白銀の騎士は私のファイターと全くの互角性能。 マスターはアインツベルンでそのサーヴァントはあの能力値……。 ここまで条件が揃えばもはや疑う余地も無い。 間違いない…………あれが、あの騎士が私が手にしようとした、セイバーのサーヴァント────!! おまけにアインツベルンのマスターは人外のホムンクルスである。 遠坂もかなり高いマスター適性を持つ優秀な魔術師であるが、根本から魔術に適した体を持つホムンクルスのマスター適性は人間のソレとは次元が違う。 その恩恵によってセイバーはその持ち前の性能を存分に発揮していた。 「マスター。よもや止めはすまい?」 敵の予想外の能力値に奥歯を噛み締める遠坂にファイターは静かに声をかけた。 「ファイター?」 「あの男───姿、武装、闘気、そして能力値、どれをとっても超一流だ。 どう考えても奴が今回の聖杯戦争における花形───セイバーだ」 吐き出された声音はまるで静寂な湖畔の如く、だがその声に籠められた感情は噴火する溶岩の様に激しい。 ファイターは目前の騎士を打倒すべき『敵』と認識していた。 「マスター私は召喚された時に申したな。確かに今の私はファイタークラスだがセイバークラスごときに決して劣らぬと。 いや実に丁度良い。あの時の言葉、今この場で証明をして見せよう───」 ファイターが前に歩みを進めながら臨戦態勢に入る。 その敵意に反応し騎士は女マスターを手で下がらせると、数歩前に歩み出た。 「オレは彼女に仕え聖杯を手にするセイバーのサーヴァント。残念だが真名はまだ明かせん。で、貴様は何のサーヴァントだ?」 「ファイターのサーヴァントだ。だがセイバーよ貴殿の言葉には一つ間違いがあるぞ?」 「ファイター?なるほど、基本枠の7クラスに入らなかった場合に被るエクストラクラスか。 ───にしても、へえ?オレに一体、何の間違いがあると言うんだファイター?」 ファイターの視線とセイバーの視線が激突する。 「なに簡単な事だ。聖杯戦争を勝ち抜き聖杯を手にするのは、貴様マスターなどではなく、私の───マスターだ!!!」 抑える必要の無くなった両者の殺気がついに爆発した。 セイバーとファイターは同時に腰に下げた鞘から愛剣を抜き放つと猛然と自身の敵を潰しに掛かった────!! 踏み込みが同時ならば打ち込みも同時。 両者の初撃は共に会心の一撃同士のぶつかり合いだった。 「っ!!!」 「くっ!?」 刃が噛み合いその衝撃がお互いに伝わっていく。 しかし両者共にその場にしっかりと踏み止まり一歩も後退しない。 一合目の打ち合いが終えるとファイターは即座に愛剣のネイリングに魔力を叩き込む。 ───ブシュルルルルルルルゥルルルルルウルゥゥウウウウウウウウウ!!! 猟犬の唸り声のような音を発しながらネイリングが回転し獲物の首筋に喰らい付こうとする。 しかし敵は猟犬の牙を難なく打ち落した。 セイバーは敵の剣を打ち払うと即座に手首を返しファイターの首を落としに来る。 馬鹿みたいに力強い一刀。 普通ならばシュ!っと鳴る筈の風切り音がヴォ!と鳴っている───! ファイターも敵と同様に苦もないかの様に敵の一撃を弾き返す。 その後二撃、三撃、四撃と攻撃を加える。 二撃、三撃、四撃と攻撃を防ぐ。 夜の闇を照らす鉄と鉄が生み出す明かり。 ファイターとセイバーが剣を叩き付け合うごとに鉄が奏でる爆発音が響く。 ファイターとセイバーが剣を防ぐ度に淡い明かり灯る。 剣士と闘士。共に筋力ランクAを超える超一流の攻撃力を誇る二人の戦い。 大気が悲鳴を上げ、大地が畏怖し、互いの武器が火花と音による喝采を贈らない方がおかしいというものだ───! その戦いをアインツベルンは唖然と見ていた。 その戦いに遠坂は呆然と見惚れていた。 でもそれは仕方が無いことだ。 何故ならこの戦いは人間程度では立ち入る資格を得られない戦い。 ヒトを超えた超人のみが参加できる、この世界最高峰の決闘───!!! 「うらぁあああああああああ!!!」 セイバーが手にした聖剣を渾身の力で振り抜いた。 ネイリングを強く握り締めその一撃をこちらも渾身の力で受け止める。 鍔競り合いの形になる二人。 ギリギリとファイターの頭に敵の刃が迫ってくる。 ───ぐっ……重い!! 「っ、く、ぬっ───ああああああああああああああああああ!!!」 腹に溜めた気合を爆発させ敵を剣ごと弾き飛ばした。 「うお!!……なっ!!?」 セイバーが驚愕の声を上げたたらを踏む。 その一瞬を見逃さずに敵へと間合いを詰め───名剣で突きかかる! 迎撃は間に合わないと悟ったセイバーは剥き出しの頭部を腕で庇う。 再び唸りを上げて襲い掛かる猟剣。 ガイィン!とネイリングはセイバーの白銀色の鎧の腹部に命中する。 だが貫通とはいかなかった。当たりが浅い。 ”直撃の瞬間咄嗟に飛び退いて当たりを殺したか……こやつ、やるな───!?” 間髪入れずに右薙ぎもお見舞いする。 「───舐めるなよ!」 セイバーが吼えた。 足元から振り上げられた剣がファイターの薙ぎ払いを防ぐ。 その後素早く後方に飛び退くとセイバーは見事に態勢を立て直した。 二人の距離が開く。 その瞬間二人の決闘者の脳裏に浮かび上がる想いは唯一つ。 ────こいつ、かなり強い───! 「いやいいな。やっぱり戦いってのはこうじゃないといけない。わざわざマスターと一緒に出向いた甲斐もあるってもん……だぜ!!」 言葉の終わりと同時に突進してくる剣士。 「どちらにせよ倒れるのは、貴様だセイバー!!」 闘士もそれに応えるように吼え猛りながら突進をかける。 力強い突進ではためく二つの外套。 二人が手にした武器が鳴らす風切り音。 その直後にドゴォ!!っという一際強い音と地面にまで伝わる振動。 桁外れの力を持つ二人のサーヴァントの激突は本当に地面が悲鳴を上げていた。 この二人の戦いは殆ど移動が無い。 ほぼその場に足を留め、手にした武器を荒々しく叩き付ける。 それはまるで、どちらがより強く、より速く、手にした剣を振るえるかの勝負でもあるようだった。 何度目かのネイリングによる打突攻撃。 しかし当然のように敵は防御してくる。 ───ファイターの持つこの名剣は突きを主体戦法に考えられた武器だ。 まるでランスのような尖った剣先で、斬るという行為をまるで考えていないような形状をしている。 しかし勘違いするなかれ。それは決して斬撃が出来ないと言う訳ではない。 勿論斬撃は出来る。 だがそれは─── シュブルルルルルルぅぅううう!! という独特の怪音を鳴らしながらセイバーの頭にファイターの剣が打ち下ろされる。 当然の如く名剣を聖剣で受け止めたセイバー。 鉄と鉄との噛み合う音がガチガチと鳴っている。 「う、この、メンドくせえ武器だな!!お前……これ、普通の剣じゃ無いだろう!?」 セイバーが鍔競り合ったまま恨めしそうな怒声を上げる。 「ふん。いやいやこれはちゃんとした、剣ではないかセイバー!」 セイバーの怒声をさらっと流しながらファイターはジワジワと剣に体重を乗せていく。 「ぐお、重っ……どこがちゃんとした……剣、だぁコノヤロウ。 ちゃんとした剣ってのはなぁこんな妙な異音は鳴らないし、こんな風に刀身回さないし、何より、抉れた様な傷跡は付かねえぞっ!!!」 ───そう、名剣ネイリングは斬ることは出来る。 しかしそれは斬るというにはあまりに禍々しい、捻り切るという方法でだ。 ネイリングの斬撃による傷はセイバーが言うように普通の切り傷にはまずならない。 大気を捻る類の剣とは違い、魔力で刀身が物理的に回っているネイリングはまるで削岩機にでもかけた様な抉れた傷跡が出来るのだ。 じりじりとネイリングの飢えた牙がセイバーの頭に迫る。 「ぬぉ……おわわ!このままじゃ……顔が無くなる!!」 「安心してくれセイバー。顔だけなんてせこい事は言わぬよ、ちゃんとその体も全部纏めて───真っ二つに吹き飛ばしてやるさ!」 「安心できるかーーーーー!!」 さらにファイターは体重と力を込める。 あともう一押しで決着が付く。 「「フッ───ハッ!!!」」 重なる気合。 止めを刺しにさらに強く踏み込むファイター。 抵抗する腕の力を抜きさり、敵の剛力に押されるように自ら地面へ背中から倒れこむセイバー。 次の瞬間───ファイターは剣に掛かっていた抵抗を突然失いバランスを崩した。 「なっ?───ガフッ!??」 直後腹を襲う衝撃。 数m後方に流れていく体。 だがダメージは全く無い。 今の攻撃は所詮はファイターを弾き飛ばすために繰り出されたただの蹴りだ。 ファイターの極限まで鍛えられた腹筋は仮にそれが大砲で打ち出された鉄球であったとしても耐え切れるだろう。 「ム!思ったよりしぶといな……それとも、貴様の機転による延命か……」 仕留め損ねた不満を隠さずにファイターが呟く。 「ふぅ、今のはちょっと危なかったぜ?」 セイバーは悠然と剣を構え直していた。 「関係ないさ。結果は同じ事なのだから」 ファイターも同じく剣を構え直す。 ───今度こそ仕留める! 二人の闘志が今度こそと燃え盛る。 蹴り足に強く強く力を込め─── 「いやそこまでだファイター。撤退するぞ」 踏み込みはマスターの言葉に遮られた。 「───!?……何故だマスター?!」 その言葉に困惑するも、決してセイバーからは目を逸らさずにマスターの真意を問う。 「言葉通りの意味だ。恐らく誰かに監視されている」 「………」 さっきの奴らがまた?と気は張ったままセイバーから目を逸らし視線で訊く。 しかし遠坂は首を横に振って否定した。 となると別のマスターか……。 流石は戦場の礼儀には厚い騎士というところかセイバーは律儀にもファイター達のこの隙を突くような真似はしなかった。 「あのセイバーは強力だ。このまま戦わせればお前の手の内を他のマスターに無償で曝す羽目になる。私としてはそれは避けたい」 「─────」 仕留め切れなかった悔いはあるがマスターの命令なら仕方あるまい。 ファイターは異議を挟まずにマスターの所まで下がる。 「逃げる気かファイター」 セイバーの不満の声がする。 「マスターの指示に従うと決めているからな。マスターが退くの言うのなら私には是非も無い」 背後のセイバーには振り返らずに断言してやる。 「そういうわけだアインツベルン。 私は直接対峙した君にならともかく誰とも知れぬ輩に自分のサーヴァントの力を見せる気は無いのでね」 遠坂はアインツベルンにそう告げると優雅に身を翻し立ち去って行く。 ファイターも一度だけセイバーを一瞥すると霊体になって主の後を追った。 ◇ ◇ 遠坂邸までの道を無言で進む。 ファイターの胸に残るのはついさっきまで行っていた戦いの余韻と仕留め切れなかったという微かな悔恨。 ……出来るのなら今夜中にあのセイバーをこの手で倒し遠坂殿に証明してやりたかった。 そう文句無しに強敵だった。 あのセイバーの正体が非常に強力な英霊であるのはもう間違いないだろう。 それに魔術や呪布などで一切隠しもせずに手にしていた、あの見事なまでの造りをした煌く剣。 神々しいまでの輝きと美しさ。 気配だけでも十分に感じ取れたあのとんでもない切れ味は恐らく『聖剣』の類だろう。 「ファイター、随分と無口だな。先程の戦闘が堪えたか?」 唐突に遠坂殿が声をかけてきた。 「いやそういう訳ではない。ただ……セイバーを仕留め切れなかったのが少し残念なだけだ」 正直に告白する。隠しても意味の無い事だ。 「──────そうか、貴公はまだ気にしていたのか」 遠坂殿はなにやら呆れたような声を上げると、おまけにやれやれなんて言ってくる。 「む、別に気にしている訳ではない」 とりあえず反論はしておく。 「そういうのを気にしていると言うのだファイター。もはや証明なんて必要あるまい?貴公は既にちゃんと証明している」 「───?いや、遠坂殿?私はセイバーを倒せなかったのだが?」 「何を言う。貴公は貴公の言葉通り決して最強のサーヴァントとされるセイバーに劣っていなかったではないか。 むしろ優勢であったくらいだ。少なくとも通常戦闘において君がセイバー以外のサーヴァントに負ける事は無いと判明したのだ。 私からすればそれがこんなに聖杯戦争の早期に判っただけでも上々の収穫だった」 そんな事を口にした遠坂殿はどこか清々しい表情をしていた。 「しかし───!」 なおも反論しようとするファイターを遠坂はやんわりと制止させる。 「別に良い。何も今夜中に証明して見せろと言うつもりないのだからな。それよりも他の連中に君の本当の力を無償で曝す方が問題だ」 ファイターにそれだけ告げると遠坂は歩みの速度を少し速めた。 この夜に得ることが出来た収穫は隣町に潜む謎の気配と間桐たちが起こした戦闘、そして先のセイバーとの戦い。 初戦は両者共に手の内を秘したままだったが、それでも全く互角の引き分け。 我々の出だしはどうやら中々に順調のようだ。 ──────Sabers Side────── 激戦の気配を周囲に漂わせたまま敵が去っていく。 「ファイターを追わないのですかセイバー?」 「ああ。オレ的には追いたいんだけどそうするとマスターをこの場に残すことになるし、 ファイターのマスターが言ってた事が本当ならまだ他に敵が居るらしいからな。今奴ら追うのはあまり旨くない気がする。 ───それにあれだけの強さを誇るような英霊だ。今夜決着を付けるつもりなら宝具戦になると思う」 やっぱ流石にそれはマズイよな?と一応マスターに確認を取っておく。 「そうですね。初戦からいきなり宝具の使用は避けるべきでしょう」 うむ、やっぱり思った通りの回答だった。 逃げられたのは残念だが無理に追わなくて良かった。 「しっかしありゃかなり手強い敵になりそうだ。 所々で手を抜いていた感はあったけどオレが知ってる限りではオリヴィエ並に強いぜアイツ?」 おまけに宝具だけじゃなく手の内も隠されていた気がするし。 む~面白くないぞ。 「オリヴィエ?───確か貴方と同等の力を持ってたといわれる親友でしたか」 「そうだ。ついでにオレの親友にして兄貴でもある漢~」 軽い口調で返答する。 実際のところあのファイターの強さは確実にオリヴィエ並かそれ以上のモノを持ってるだろうな……。 オリヴィエほどの剣技は無かったけどその代わりとばかりにパワーがあった。 ───オレと同じくチマチマした技よりも一気に力で押し潰すタイプかな。 「ではファイターが私達の最大の障害となる相手ですか?」 「う~んそうだなー。他のサーヴァントはまだ見てないけど、オレの勘では多分あいつが最強の敵になるんじゃないか?」 「…………」 「まあそう心配するなってマスター!オレだってまだ手の内も宝具も見せきってないんだぜ?今夜のところは五分だよ五分! 次に合ったらファイターなんてボコボコにしてやるからそんな顔しないでくれ。 ……と言ってもいつも通り人形みたいなあまり変化無い顔してるけどさ……」 それが不満といったら少し不満なセイバーだった。 このマスターは絶世の美女だけど人間らしさがとても少ない。 話によると彼女はホムンクルスらしいが感情が乏しいのはそのせいなのだろうか。 マスターもオードやアンジェリカみたいに笑えばきっと可愛いのに………ちぇっ。 「じゃあマスター次行こうぜ次。ファイターは逃がしたけど他にも敵がいるかもしれない」 そういうとセイバーはアインツベルンをいわゆるお姫様抱っこで抱え上げて馬車に乗せてやる。 途中無礼者と言われた気がしたがさっきの戦闘の後遺症が引き起こした空耳に違いない。 男なら今の罵倒は鉄拳ものだが女に手を上げるなど男の恥晒しも良いところ。 それに騎士たる者、婦人奉公は大切だしな。 「それじゃ行くぜ。馬の名前は知らないけど、ハイヨーシルバー!」 馬に鞭を打って戦場には似つかわしくない無駄に豪奢な馬車を走らせる。 二人を乗せた無駄に騒がしい馬車はガラガラゴロゴロパカポコパカポコと夜の町へと走り出した。 ──────Casters Side────── ──────チッ感付かれたか。 キャスターの工房の一室で瞑想していたソフィアリは目を開いた。 ソフィアリが放った使い魔にセイバーとファイターの戦闘を監視させようとしたが、どうも敵の警戒網に近づき過ぎたらしい。 あの赤いスーツを着たマスターがよっぽどの使い手なのか、それとも単に運が良いだけなのか判りかねるが……とにかく彼の監視は失敗に終わったのだ。 ───アーチャーとの戦闘を終えた後、彼らは即座にキャスターの陣地に帰ってきた。 ソフィアリが単独で戦ったマトウの実力はそんなに大したものでも無く、 悪く評価しても半人前程度の実力なんかではなかったが、かといって良く評価しても平均的な力量しかなかった。 要するに並も並。その辺によく居るような平均的な魔術師だった。 ソレに対しソフィアリは曲がりなりにも名門も名門のソフィアリ家の魔術師だ。 魔術回路面の話だけならその辺の魔術師よりは優れていると言えたし、何より彼には他の誰にも無いようなとっておきの武器がある。 持ち前の魔道の名門の血肉とキャスターから譲られた複数の魔術刻印は彼をトップクラスの魔術師にまで伸し上げることになった。 間桐の魔術属性はどうも戒めとか強制とかそういう類のものだったようだが、 その殆どが複数の魔術刻印で武装したソフィアリの防御力の前には通用せず、 苦し紛れに襲わせて来た小汚い蟲の使い魔の群れは刻印に記録されていた爆炎の魔術で即座に灰に変えてやった。 ソフィアリと間桐の魔術戦はほぼソフィアリのワンサイドゲームに終わり、もう一撃とどめの火炎を加えようとした時にあの邪魔者が割って来たのだ。 ────ギリッ!と奥歯を鳴らす。 あと少しだった。あともう少しでマスターを一人殺せたと言うのに、あのアーチャーめぇ……! 一時とはいえ完全に失った脇腹を撫で擦り、戦慄する。 ソフィアリはアーチャーに撃たれた。 間桐に止めを見舞ってやろうとした瞬間に巨大な矢が放たれた。 一射目はキャスターが咄嗟に展開した防護結界により防がれたが、続く第二射目を何とか避けようしたが腹に喰らってしまった。 その隙にアーチャーは間桐を連れて即離脱し、キャスターは自分の傷もそのままにソフィアリの治療を行ってくれたのだ。 しかし驚く事もあった。 キャスターの治療魔術だがあのサーヴァントは『世界の書』を使用した形跡が一切無かった。 という事はあれはキャスター自身が習得した魔術なのだろう。 驚いた事と言ったらまさにそれだ。 キャスターはマスターに治癒の魔術はかけなかった。 彼はソフィアリの吹き飛んだ腹の傷を『治癒』したのではなく『復元』したのだ。 ───無くなった肉体を元に戻す魔術は治療ではなく復元の域になる大魔術である───。 それを容易く行うとは余程治癒魔術に特化しているのか、あるいはとんでもなく高度な治癒魔術を習得しているのか。 …………クリスチャン・ローゼンクロイツの経歴を考えると恐らく両方である可能性が高いだろう。 そして、キャスターは腹の治療を済ませると自身の傷にも治癒を施し、退却を進言してきた。 当然、腹の虫が治まらないソフィアリはキャスターの進言を蹴った。 ……が。 「マスター。やはり本気でサーヴァントの相手をするのならこちらに有利な戦法を取るべきです。 申し訳ないですが、正直工房外でのサーヴァント戦……ボクの勝算ははっきり言って低い。 先程のアーチャーとの戦いで確認が出来ました。そう強力ではないであろうアーチャー相手にもボクは手こずりました。 もし今日の相手がセイバーやランサーの様な接近戦を主体とするようなサーヴァントだったら……間違いなくやられていたでしょう」 などと言われては流石のソフィアリも引き下がるしかなかった。 その後、聖霊の家に帰還した彼らは工房作成の続きに取り掛かるキャスターと使い魔で町の監視をするソフィアリとで役割を分担した。 ───そうして、町に放った使い魔でセイバーとファイターの戦いを僅かだけ監視したのがついさっきの話だ。 少しばかりの観察だったとはいえ、アレらがキャスターの言う 強力なサーヴァント だというのは彼にも理解できた。 キャスターとは戦闘力の次元がまるで違う……。 サーヴァントの戦闘力は単純にステータスだけで判るものではない。 マスターが見ているステータスはあくまでそのサーヴァントの能力値だけを表わしている。 どの程度の身体的性能を持つのか、どの程度の精神的性能があるのか、というのを見ているだけにすぎない。 サーヴァントの戦闘力とは、そのステータスに各自の固有・保有スキルそして戦闘技能、宝具が加わる事で初めて判るものなのだ。 故に単純にステータス値の低い高いだけではそのサーヴァントが強い弱いとは言い切れない。 ───だが、それでもあの二体はキャスターとは次元違いだった。 単純なステータスの差ではない。 もっと根本的に戦闘技能があまりに違い過ぎる。 動きなんて全く見えなかったし、理解出来なかったがそれでも本能的にあの凄さが理解出来る。 きっとあいつらは幻想種と呼ばれる怪物を相手にしたような英雄や、非常に高名な英雄なのかもしれない。 そう思える程にあの二人のサーヴァントにはキャスターには無い圧倒的な迫力があった。 どうやらキャスターの進言は正しかったようだ。 もしも今夜。あの場所で遭遇したのがアーチャーではなく、この二体の内のどちらかだったら私は、今頃────。 万が一の起こり得た死という恐怖が背中を這い回る。 まあ良いさ。少し腹立たしいがキャスターの言う通りだ。 一番大事なのは最後まで勝ち残る事だ。勝ち残れればそれで良いのだ。なら経緯を問う必要は無い。 再び送り込んだ使い魔で町の監視に専念する。 自分は野蛮な真っ向勝負の決闘を上等とする古臭い騎士などではないのだ。 そう、経緯を問う必要は一切無い。 私は魔術師だ。ならばより魔術師らしい戦いをすればいいのだから────。 ──────Riders Side────── 血だらけの騎兵は寺から撤退した。 一見まるで堪えていないように見えるがライダーのダメージは十分過ぎるほどにある。 しかし、そんな彼に傷の痛みに耐えさせているのはファラオとしての自尊心だった。 「ハァ、ハァふぅはあ……くそが」 傷の痛みを我慢し、屈辱を憤怒に変え体を動かす。 ───おのれ、これがつまらない戦争だと侮ったツケ、か! どうやらあのランサーを少し舐めていたらしい。 だがその甲斐もあってか奴の力量は大体判った。 あの不可思議な大槍の能力と広い間合い、槍兵特有の速さにさえ十分に警戒すれば勝てる相手だ。 ならば次は即行で殺しに───。 ”────否、駄目だ。” それでは甘いのではないか? そのやり方では温いのではないか。 そんな事では恐らくこの聖杯戦争では勝てない。 「勝てない……だと。ふざけるなよ……ふざけるな!!」 俺様の敗北は即ち、我が最愛の妻ネフェルタリの奪われた亡骸の永遠の喪失に他ならないのだ───! そう。絶対に負けるわけにはいかない。 「いいだろう…………この傷の褒美だ。このラメセスの本気の戦争というものを見せてやろう」 暫らくは他のサーヴァントの観察から始める。 その後、各自の力量を見極めた上で神判を下す。 敵の戦力を完璧に把握・分析し、相手の二倍の戦力を以って敵を情け容赦なく完全に叩き潰す。 エジプトにおいて最も戦争と政治に優れたと讃えられたファラオ・ラメセス二世がついにその本性を現わし始めた。 ──────V&F Side────── 助けろ!ウェイバー先生!第三回 F教授「今回は死者が出なかった……不吉だな」 Vくん「……死んでも駄目。死ななくても駄目。どうしろって言うんですか先生」 F教授「いや言ってみただけだ」 槍兵 「そしてまた拙者の出番が無かった……これは贔屓か?」 雨生 「あと俺の出番は?バーサーカーは俺がいないとどうしようもないから置いとくとしても」 Gさん「おぬしらレギュラーキャラは引っ込んでおかんか!喝ーーーーッ!!」 V「……フラット。成仏用の塩を撒いておかなかったのか?」 F「あれぇおかしいですね?先生に言われた通りにちゃんと撒きましたよ俺?」 V「さて現在の戦況だが今回で聖杯戦争の一日目終了だ。にしても早くもバーサーカーを除く六組が戦闘をしているな。 槍VS騎、弓VS魔、剣VS闘。脱落者は今の所なし。 各自戦闘結果は槍VS騎はラメセスの敗走。弓VS魔は弓優勢の痛み分け。剣VS闘は引き分け。 死傷者の総合状況はラメセス中傷、間桐重傷の後何とか回復、沙条翁死亡、トマスタァ死亡だ」 F「サーヴァントではラメセスさんが、マスターでは間桐さんが一人だけ圧倒的にボロボロですね」 V「ラメセスはたらふく蜻蛉切を喰らってたからな。まさに塵も積もれば山となるの典型だ。ラメセスと間桐が早くも危ない」 F「今の状態で他のマスターに襲われたらかなり危険ですね。どうなるんでしょうか?」 V「さあ?」 F「さあ?って先生……」 V「ネタバレは良くないだろう?」 F「なるほど」 ~設定の変更について~ V「さて、今更だがこの『FateAS』を読むに当たって一つだけ注意点があるので気を付けて欲しい」 F「まあ当然の様に気付いている人もいると思いますがこのSSは若干の設定変更があります」 V「まず宝具の扱いについて設定変更がある。ベーオウルフのネイリングやローゼンクロイツの勝利の書がそうだ」 F「ローゼンクロイツなんか思いっきり自分の宝具は世界の書一個だけって言ってましたよね。どういうことですか?」 V「本来の型月世界設定を守るための措置だ。少なくともローゼンクロイツは宝具を二つ持つような強力な英雄ではなかったのでな。 ベーオウルフでも流石に宝具三つは無理だろうと判断しネイリングと勝利の書をオミットした」 F「全然オミットしてないじゃないですか……特にネイリング」 V「だからあくまで形式上の話だ。 FateASのベーオウルフは本来なら魔剣と鉄腕しか持ってないが遠坂が外部からネイリングを与えるという形で宝具を三つ所有するという状態にした。 同様にローゼンクロイツの勝利の書も正確にはオミットではなく、使用形式が変わるだけで勝利の書の能力はちゃんと使用させる。 ま要するに中身自体はまとめサイトの内容とそこまで極端に変わってないということだ」 F「つまり言い回しが変わってるだけで出来ることは同じと言う事ですねー」 V「そういうことだ。次にステータス値についてだが、ローランとベーオウルフのステータスが若干変化している」 F「さり気なく上がってますね……」 V「ローランはセイバークラスにするに当たってセイバー基準値をベースに、ベーオウルフもステータスの増減を加えて修正した。 まあ身も蓋も無い言い方をすれば作者側の都合だ。 理屈を付けるならば本文中にあった様にマスター補正によるステ変動があったものと解釈してもらえれば助かる」 F「ホムンクルスのアインツベルンが凄いのはまあ良いんですけど、遠坂さんはそこまで凄いんですか?」 V「マスターの適性力を図で表すと凛>遠坂>時臣だと思ってくれ」 F「あの……凄いマスターは出ない筈じゃ……?」 V「本当ならそうしたかったんだがzeroで時臣の才能は歴代遠坂家当主の中では割と平均ってのがあったせいでこうなった……。 遠坂のキャラ造形がパーフェクトトッキーになった背景にはつまりそういうのも含めてだったりする」 F「ところでローランさんが敏捷Aなら忠勝さんの立つ瀬が無くないですかね?」 V「その辺については問題無い。 体力馬鹿のローランと超長距離走やった場合はローランの方が速いが短距離では軽装な分忠勝の方が全然速い。 クーフーリンとメデューサと同じ関係だな。まあつまりFateASの最速キャラはランサーだ」 F「妙な部分で拘りますよねー」 V「各クラスや各英雄の特色を別の奴で潰してしまうと面白味が削がれるからな」 V「そうして最後に宝具の和名やカナ名が思いっきり変わっている場合があるが、これは完全に作者の趣味だぁっ!!」 F「おおっと、いきなりぶっちゃけたぁぁ!?」 V「『前進する大幻槍』は本多忠勝の前進や直進と言ったキーワードを使いたかっただけだぁっ! いやまあ蜻蛉切ってどういう能力?って質問が本スレであったとき見えない槍が前に進んで喰らう感じと言う説明に感動したってのもあるのだがな。 もう一つついでに言えば一矢千殺とヘアルフデネの名前が変わっちゃったりするぞぅ!」 F「おおっと先生が開き直ったぁぁぞぉう!イヤッホゥ!」 V「まあこの辺のは先も言ったが完全に作者の趣味がモロに反映してるから見なかった事にしてスルーが正しい対処法だ!」 V「それでは諸君また次回」 F「バイバーイ!」
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黒鍵が奔る。六つの閃光が綺麗な放物線を描きながらキャスター目がけて襲いかかった。 「うふふ」 だが、キャスターの笑いともに、金属の甲高い悲鳴が響きわたる。 キャスターの周りにひしゃげた黒鍵の残骸が飛び散る。 キャスターの手には、赤く染まった巨大な槍が握れていた。 残骸の雨の中、綺礼はすばやくキャスターの懐に入り込み、キャスターの顎を吹き飛ばすかのように綺礼の拳を舞い上がった。 八大招式・立地通天炮 八極拳絶技が今度こそキャスターを倒すべく名乗りを上げた。 「ふふ、うふふふ」 それをキャスターは凄絶な笑みを浮かべながらそれを迎えた。 「――――っ、言峰が言っていた筆ってコレのことか」 士郎は教会の扉を乱暴に開け、転びそうになりながらも、問題の部屋に到達した。 その手には先ほど見つけた筆が握られていた。 一見なんの変哲のない筆だが、濃密な魔力が感じられる。 絨毯を捲り上げ、床に筆を付けた。 すると筆がだんだん湿りだし、魔力の帯びた赤い液体がトクトクと流れ出で来た。 言峰に言われてようにほぼ走り書きで書いていく。 こんな適当でホントに成功すんのかよと思いつつも、これぐらいのスピードで書かないと間に合わない。 慎重に書いて時間切れで、キャスターに殺されるぐらいなら言峰の言を信じるしかなかった。 「よし」 一応、拙いながらも召喚陣としての体裁を取っている陣をみて深呼吸する。 ここから本番だ。 イメージする。それはかつてこの世界に溢れ、今では空想と貶められた奇跡の再現――魔術。 それを行使するためには本来ありもしない神経を生み出す必要がある。 頭に浮かぶ神経一本一本を裏返して、それぞれが幻想を纏うようにしていく。そのイメージが頭から順に降りていく。 「そ、素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ」 その呪文を唱えた時、体中の魔術回路が一気に励起する。 あり得ないものをあり得るものすることを驕傲と歌うのか体の節々から痛みがこみ上げてきた 「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」 痛みが増し、思わず先ほど覚えた呪文も忘れそうになる。 「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。 繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」 召喚陣に赤い燐光をあげる。密閉した空間に風が吹き付ける 「告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るベに従い、この意、この理に従うならば応えよ。 誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!!」 痛みが閃光は最高潮に達し、爆発した。ドッサっと士郎は尻餅をつく。急激な虚脱感が体に襲いかかった。 「っ」 片手に焼けるような痛みが走る。見れば、三画で描かれた奇妙な文様が刻まれていた。 召喚陣の中心には、一人の女性がスカートの端をつかみ、恭しく礼をしていた。 「今宵、聖杯の招きに応じ、現界しました。我が名はアーチャー。――弓を射る者です」 アーチャーと名乗る女性が顔を上げた瞬間、士郎は思わず息を飲んでしまった。 言峰がキャスターと呼んだ女も凄絶な美女だったが、それに比肩するほどの美しさだった。 しかも間近で見る分、思わず士郎は見とれてしまった。目の前にいるのが彫刻と錯覚する整った顔立ち。 艶のある金の長い髪は揺れるたびに砂金が零れているように輝いてみえた。 「問おう。あなたが私のマスターか」 「え? あ、ああ。召喚したの――――」 士郎の話を遮ったのは、微弱な揺れと大きな音だった。士郎は現実へと引き戻された。 「悪い。説明あとでするからちょっと来てくれ」 「はい? え、ちょっと」 急な発言に戸惑いを隠せないアーチャーを尻目に士郎は駆け早に聖堂へと向かった。 聖堂の扉には大きな風穴が空き、砕けた木片がそこら中に飛散している。言峰は祭壇にもたれ掛かる形で倒れていた。 「言峰!」 最悪の状況が脳裏を掠め、士郎は急いで駆け寄った。 「令呪。フン、どうやら召喚には成功したようだな。 いま貴様がマスターとなった時点で、ここからは参加者の問題だ。私はもう干渉せん」 少し弱っているものの、その言葉は淀みなく紡がれたので士郎はほっと胸を撫で下ろした。その彼の前に影がすうと伸びてきた。 「御免、ごめん。つよく投げ飛ばしすぎちゃった。お姉さん、反省ですう」 木片を踏み潰しながら、キャスターは一歩ずつ迫ってくる。キャスターは目を細めながら呟いた。 「へー、やるじゃなぁい、僕。サーヴァントを召喚したんだ。 本当はあとでじっくり教えてあげようと思ったのにぃ、こいつが邪魔するから」 キャスターは軽口を叩きながらも、右手の槍を握り替えしていた。 表面的には余裕を装っているものの、こちら側のサーヴァントを警戒しているようだ。 「成る程、こういう事だったのですね」 突然、誰もいない所から声がすると思うと同時にその空間が揺らぎ、アーチャーが実体化した。 「あら、あらあら。随分と可愛らしいわねぇ。お嬢さん。 見たところキャスターみたいだけど、キャスターは私だから、一体なんのサーヴァントかな?」 キャスターの声色からやや警戒心が薄れたのを感じた。士郎は自分の不安が的中したと確信した。 このアーチャーは確かに並はずれた魔力があり、キャスターと同規格だとわかったが 衛宮士郎という存在なら思い一つで殺せるような圧倒的な力が感じられないのだ。 魔力という点を抜けばアーチャーは自分と殆ど大差がなかった。 こちらの心配をよそにアーチャーは前に歩み出ながら、士郎に視線を送った。 “マスター、命令を”という視線を。 士郎は知らず知らずの内に頷いてしまった。なぜならアーチャーには得にも言わせぬ雰囲気があったからだ。 「セイバーというカンジではなさそうねぇ。あ、もしかしてライ――――」 「―――吹き飛べ」 キャスターは消えた。 いや正確には吹き飛ばされた。向こう側でキャスターが転がっていた。 「では、マスター後ほど」 目を見開いている士郎に微笑を浮かべながらアーチャーはしっかりとした足取りで、教会をあとにした。 しくじった。先ほどの衝撃を殺し損ない転がるキャスターは自分の過ちを恥じた。 あの手のサーヴァントが最も危険なのだ。低いステータスでありながらも強力な一手を持った、いわゆる宝具に特化したサーヴァント。 確かにステータスで優秀あるほうが良い。それで戦闘を有利に進めることができるだろう。 しかし劣勢も跳ね返し番狂わせをもたらす切り札というものが別に存在する。それが宝具なのである。 先ほど、キャスターを吹き飛ばした壁も宝具だと考えてよいだろう。 「ぷはぁ。私が知っている奴は厳つい奴多かったもんなぁ。 うーん、三十六変とか七十二変とかやっている奴いたから見た目は重視してないつもりだったけどなぁ。うーん反省」 キャスターが飛ぶようにして立ち上がる。壊れた教会の扉の前で、先ほどのサーヴァントが片手を腰にあて立っていた。 キャスターは凝視する。 白を基調とした豪奢なドレス。明らかに戦場とはほど遠い出で立ちで武人から感じられる殺気というものが一切なかった。 戦場に迷い込んだお姫様という感じである。 「えっと、キャスターですね。いきなり攻撃してなんですが、この場は立ち去ってくれませんか。 マスターとの契約の問答をまだ終えていませんので」 キャスターは思考する。 先ほどの宝具があるために接近戦は芳しくない。なら狙うなら遠距離であろう。 「もう、しかたないわねぇ。お姉さん優しいからこれで許してあげる」 キャスターが指を鳴らし、それに呼応するかのように教会一帯に青い光を灯した特殊な文様が浮き出てきた。 周囲の状況の変化にアーチャーは目を見張った。 「! まさか、それは」 アーチャーの声が震える。先ほどまで月が出ていた夜空が曇り、雨が降っているのだから。 魔術を少しでもかじったモノであるならば絶句していただろう。それは雨乞いのようなものではなくもっと高度な魔術。 「――――天候操作ですか!」 地面に描かれた魔法陣から膨大なマナがくみ上げられキャスターを介して空へと上っていく。 今、雹を降らし、竜巻を起こし、地震をも起こすのもキャスターの思い一つで決まってしまう。 それこそが天候操作。常人でははかり知ることができない領域が目の前にあった。 「まあ、限定的なモノだけど。それより、アーチャー貴方ちょっと病的に白いわ。もうちょっと焼いた方が健康的でいいわよぉー」 極上な笑みを浮かべながら、右手を振り下ろす。 そして世界は光に包まれた。そのあとを追うかのように轟音が響き渡った。
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【元ネタ】史実 【CLASS】ライダー 【マスター】 【真名】オジマンディアス 【性別】男性 【身長・体重】179cm・65kg 【属性】混沌・中庸 【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具EX 【クラス別スキル】 対魔力:B 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。Bランクなら三節以下の詠唱の魔術を無効化でき、大魔術を以てしても傷付けるのは難しい。 騎乗:A+ 乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。A+ランクともなると竜を除いたあらゆる幻獣クラスをも乗りこなせる。 【固有スキル】 カリスマ:B 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。一国を治めるには十分なランク。 神性:B 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。彼の場合はラー・メス・セス、即ち“神の子”を自負し崇敬されたため、ランクは高めである。 皇帝特権:A 本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。該当するのは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る。 太陽神の加護:A 太陽神ラーの加護を得ていることの証左。 【宝具】 『闇夜の太陽船(メセケテット)』 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:500人 由来:「太陽神ラーが復活する王を運ぶ船」、「王が空を翔ける時に使った船」として知られる『太陽の船』。 オジマンディアスが普段移動する際に使う船。船全体が太陽と見紛うほどの輝きと灼熱を発しながら超音速で飛行し、太陽の力を具現した「蛇を屠る蛇(ウラエウス)」と呼ばれる強力な魔力光を地上に放射して、敵対者だけでなく、地上さえ灼き尽くす。 その火力は一夜で東京全域を火の海に変えることができるほどだといい、作中では核戦争の発生を想定して設計されたシェルターとしての面を持つ地下工房を容易く粉砕してみせた。 空間から舳先のみを出現させ、砲台のように使用することも可能。 『Grand Order』では各種通常攻撃として画面外にいるこの船が砲撃をしている。 『熱砂の獅身獣(アブホル・スフィンクス)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:300人 由来:エジプト神話に伝わる、王家の守護聖獣。 天空神ホルスの地上世界での化身、荒ぶる炎と風の顕現として恐れられる、獅子の体と人の貌を持った幻想種。別名を「恐怖の父(アブホール)」といい、地中海から西アジアにかけて数多の伝説を有する事で知られる伝説の四足獣。 ランクは“神獣”。竜種に次ぐ位階を持つ幻想種とされる。 大型トラック以上の巨体でありながら物理法則を無視したかのような速度と移動を行い、空中を疾走して全方位からの攻撃を行う。主な武器は強靭な前足の爪と獅子の牙で、それらを衝撃波(ショックウェーブ)が発生する程のスピードとパワーで振るう。爪は魔力によって赤熱化させることも可能で、山を削るほどの威力の攻撃を防ぐセイバーの鎧でも耐えられない。突進の破壊力はセイバーの剛剣に「風王結界」の段階的開放と魔力放出を併用しても尚防ぎきれない。 また極めて高い知性を有し、セイバーの戦闘スタイルと狙いを見抜いて連撃の中にフェイントを挟んで牽制してきたり、攻撃によって発生した破片に魔力を付加させて飛び道具として放ってくるなど、獣とは思えない高度な戦術を駆使する。 更に王の力を体現するとも称される咆哮は灼熱の火炎と全てを破砕する大気を伴い、それによって爆炎の竜巻を引き起こす。その威力は並木を一瞬で炭化させ、鉄筋コンクリートで作られた大型ドーム施設の東館を数秒と経たず融解させるほど。 生命力も文字通り化け物じみており、頭部を斬り落とされても死なないばかりか、頭を失ったまま相手の動きを感知して何事もなかったかのように戦闘を続行する。 総数は不明だが、劇中では最低でも8体存在することが確認できる。少なくとも平均的なサーヴァントに伍する力を持つ幻想種ではあるが、これもオジマンディアスにとっては代えの効く駒に過ぎず、「我が威光、我が栄光の一欠けら」と呼び、斥候や先兵として扱っている。 生身のものと岩石で躰が構成されたものの2種類に分けられるが、備えている能力は変わらない。 『Grand Order』では♂♀のスフィンクス(「スフィンクス」「マリカスフィンクス」)が大型エネミーとして登場するほか、自身のExtraAttackで王種個体であるスフィンクス・ウェヘ厶メスウトが登場する。神性と性別の特性が存在する模様。 『光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)』 ランク:EX 種別:対城宝具/対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:800人/1人 由来:オジマンディアスが生前に建造した神殿、および彼の心象にして生前の威の具現。 古代エジプトにおいて建造された光り輝く神殿が複層的に折り重なって偉容を為す、全長数kmにも渡る超大型複合神殿体。彼の心象と生前の威を具現化させた、固有結界に類する最大の切り札。 生前自身が建築した神殿のみならず、自分が関わっていない神殿まで複合されており、デンデラ神殿、カルナック大神殿等の複合神殿体をさらに複数組み合わせ、アブ・シンベル大神殿、ラムセウム等の巨大神殿や霊廟までも複合された、現実には存在しない異形の大神殿体となっている。その驚異的規模と魔力光によって、まさに星空が地上に降りて来たかのような偉容を誇る。 無数の内部神殿群はスフィンクスの群れが守護しているほか、ファラオに対する絶大な祝福と不敬な敵対者への呪いが神威として備わっており、各神殿ごとに自らの領域に立ち入った対象へ向けて、祀る神にまつわる加護や呪いを任意に与えることが可能。劇中で披 露されたのは主に以下の三種。 『オジマンディアス自身とその配下に仮初の不死の肉体を与える』:この能力がある限り、オジマンディアスは霊核を破壊されても即座に無限再生する。さらに不死の恩恵は使役するスフィンクスの群れにも与えられており、オジマンディアス同様に不滅となっている。 『呪詛による猛毒』:真っ当な生物であれば二秒と絶たずに死亡し、効果を受けたサーヴァントはパラメータが軒並みランクダウン、スキルが弱体化させられる場合もある。神代の肉体を持ち毒に強い耐性を持つアーチャーも頑健スキルを弱体化させられ、毒のダメージを受ける程。 『敵サーヴァントに対する宝具真名解放の封印』:最も厄介とされる能力。ただし真名解放の封印については、その宝具もしくは本人が神に由来するものであれば無効化される。劇中ではランサーの宝具および存在そのものがこれに該当している。 オジマンディアスの玉座がある主神殿たるピラミッド最奥は「神の眼」を模したシンボルを備えた空間で、膨大な魔力回路を思わせる幾筋もの淡い光に照らされている。オジマンディアスは神殿内部で起きる事象の全てを自動的に認識し、外の様子も細かく把握する事ができる。主神殿の表層部はヒッタイトの神鉄で覆われており、並みの対軍宝具ならば無傷で弾き返す強度を持つ。その他、“デンデラ大電球”に利用する魔力を充てがうことで「ピラミッド複合装甲」という形で対粛正防御(ワールドエンド系の攻撃にさえ対応する最上級の防御)を展開させることも可能で、防御においても超一流を誇る。 主な攻撃方法は神殿最奥に存在する“デンデラ大電球”から生み出される超絶の雷撃を交えた大灼熱の太陽光で、これは太古の神々の神威さえ思わせる威力を持つ。この大灼熱は複合神殿体主砲より神殿外へ向けて魔力砲撃を行うことが可能で、決戦の最中に手出ししようとしたタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦とその僚艦数隻を、発射されたトマホーク巡航ミサイル群ごと蒸発させるほどの威力と攻撃範囲を誇る。全力で砲撃した場合には他のサーヴァントに宣言したとおり、東京全土が炭化する。更に神殿内部に砲撃の焦点を合わせた場合に限り、その際の最大火力は太陽面爆発にすら匹敵し、不完全な状態とはいえ単独ではセイバーのエクスカリバーですら相殺しきれないほどの威力となる。しかしこの場合は、その規格外の威力で神殿までも大部分を破壊してしまう(セイバーとアーチャーの宝具と撃ち合った際には、放たれた大灼熱によって神殿体の基盤が八割方消滅している)。 更なる奥の手として、巨大な大複合神殿を上空に出現させ、大質量で物理的に対象を圧し潰して破壊する大質量攻撃が存在し、『Grand Order』ではこちらが宝具攻撃に当てはめられている。『神聖円卓領域 キャメロット』では星の聖剣の光と同質のものとされる聖槍ロンゴミニアドの外装をこの大質量攻撃により粉砕し、主人公たちの道を切り開いた。ただし、この奇策は装甲を捨てる事と同意義であり、攻撃に対して一時的だが丸裸になる。なお、基底部は大電球のもたらす魔力によって強化されている。 彼が建造した訳ではないデンデラ大電球などが、何故、この大複合神殿の一部として存在しているのかは、オジマンディアスの過去に由来する。生前に数多くの巨大神殿を建造しながらも、同時に「過去現在未来、すべての神殿はこの身のためにある」と宣い、過去に建造された数多の神殿にまで美化を施し、我が物とした。二十一世紀現在でさえ、エジプト各地のモニュメントに最も多く名が刻まれている人物は、誰であろう、ファラオ・オジマンディアス(ラムセス二世)なのである。(彼を慕う諸王子が広く名を残したのだ、とする説もある)
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【元ネタ】史実 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】小野但馬守政次 【性別】男性 【身長・体重】170cm・58kg 【属性】混沌・悪 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷C 魔力B+ 幸運E 宝具D 【クラス別スキル】 気配遮断:D サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。 神明裁決(偽):C ルーラーとしての最高特権。 聖杯戦争に参加したサーヴァントに令呪を行使することができるスキルだが、 本来、小野但馬守はルーラー適性を持たず、また、“歪曲”スキルによる強制付与のため、 正規の参加者として召喚されていた場合でも、他のサーヴァントに対する令呪の行使は不可能。 ただし、自分自身に令呪を用いることは可能であり、彼は専ら単純な魔力・呪詛の強化に令呪を用いる。 【固有スキル】 歪曲:A 本来呼び出したクラスが強制的に歪められ、別のクラスの特性を付与された証。 引き替えに元のクラス別スキルのいずれかが低下する。 小野但馬守の場合は気配遮断が低下してDランクとなっている。 神性:D “中井家文書”に於いて、死後に怨霊として祟りをもたらし、 後に二宮神社に但馬明神として祀られた。 無辜の怪物:D 井伊、徳川両家の大義名分を保つため、その在り方・功績を捻じ曲げられた逆臣(あくやく)。 能力・姿が変貌してしまう。 彼の場合は他者に善意を向けられない人格の複雑化と、“呪詛”能力などを付与される。 呪詛:D 呪術という魔術系統の型に収まっていない呪の魔力の操縦。 明確な逸話に乏しい彼の呪は、“阻害”の概念を有する攻撃呪詛として機能する。 【宝具】 『汚名齎す怨嗟の呪(ぎゃくしんのせんおう)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:1000人 令呪を一画使用して展開する、膨大な魔力で構成される呪詛。 高密度な呪の魔力は、極めて特殊な性質を有し、どれほど高い対魔力スキルを以てしても、 ダメージ削減や防呪、解呪などが一切できない。 ただし、呪詛は水神系統の加護などでのみ、ダメージ軽減・防御等が可能となる(水の魔力放出なども効果がある)。 令呪を用いない場合の真名解放も可能だが、その場合は本来の(Dランク相当)威力での展開となり、 当然呪詛の威力は大幅に減少する(それにより、対魔力や抗呪・加護系スキルで防御可能になる隙も生じる)。 【解説】 遠江国井伊谷は井伊氏に仕えた家老で、同じく家老の小野和泉守政直(道高)の嫡男。小野道好とも。 父の病死後に家督を継ぐも、井伊氏と対立し、奥山因幡守の暗殺や、主君の井伊直親が徳川氏と内通したという 虚偽の報告を今川氏へ行い、直親を謀殺させるなど、露骨ともとれる対井伊、親今川路線を取った。 直親謀殺後は嫡男の虎松(のちの井伊直政)をも討たんとしたが果たせず。 その後数年間は表立った行動を起こさなかったが、武田の遠江侵攻が始まると再度氏真の命を受け、 井伊谷を掌握せんとし、井伊氏より当地を横領。 その後、徳川家康に帰順した近藤、菅沼、鈴木らの、通称・井伊谷三人衆によって井伊谷は奪還され敗走。 堀川城攻めの際に見つけ出され、獄門に処された。彼が井伊谷を掌握した期間は、34日とされている。 井伊氏にとって代表的な奸臣、専横者でもあるというのが後世の評価である。 だが、徳川氏を絶対善と仰がずともよい時代になると、“小野但馬守奸臣説”に対する異説も出始め、 “非”奸臣説に影響を受けた作品も、近年では存在感を増しつつある。
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軍師の指揮:A+ (諸葛孔明(エルメロイⅡ世)) 軍師系サーヴァントに与えられるスキル。自己を含めた軍としての力を最大限に引き出す。 A+ランクであれば、死を覚悟し命尽きるまで戦うことを決意した死兵に等しい力を持つ。 【A+ランク】 【Aランク】 【Bランク】 【C+ランク】 【Cランク】 【Dランク】 【Eランク】
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【元ネタ】ケルト神話 【CLASS】バーサーカー 【マスター】 【真名】ピサール 【性別】男性 【身長・体重】181cm・221kg 【属性】混沌・狂 【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具A+ 【クラス別スキル】 狂化:B 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。 【固有スキル】 芸術審美:E- 芸術作品、美術品への執着心。 芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、 ごく低い確率で真名を看破することができる。 ただし現在はクラス能力により狂化している為、能力を発揮できない。 【宝具】 『屠殺者(アラドヴァル)』 ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1000人 魔人王ピサールが持つ凶暴な意思を持つ血に餓えた毒槍。 周囲から無差別に魔力・生命力を熱として略奪する力を持つ。 略奪をされた対象は体温の低下と体表からの熱の放出により、 周囲の温度が上昇したような錯覚に陥る。 1ターン経過するごとに略奪の範囲が広がり数日間で最大の規模になるが、 略奪の度合いは穂先からの距離に比例して減少する。 熱が一定以上蓄積された状態で一気に開放することで、 広域を焼き尽くす高熱の瘴気として放出する。 『屠殺者』を完全に支配できる者に握られて居なければ、 単独で勝手に動き能力を発動させる。 『遮蔽氷鞘(カラド・ウィシュケ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1個 封印の釜が変じた、圧縮された冷水の魔術礼装。 包み込んだものと外界との熱のやり取りを遮断する。 『屠殺者』を包み込むことで、熱としての略奪能力を封じることが可能。 この『遮蔽氷鞘』に包まれた武器による攻撃は、 ダメージ判定に冷気によるボーナスを得る 【解説】 毒槍『屠殺者』を持つ、ペルシャの魔人王。 太陽神ルーに槍の回収を命じられたトゥレンの息子たちによって、 黄金の林檎で額を割られ、槍を強奪された。 【出演SS】 マスターV教授(+フラット君)のサーヴァント講座 七時限目
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【元ネタ】ブードゥー教 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】ゲデ 【性別】男性 【身長・体重】188cm・77kg 【属性】混沌・中庸 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具B 【クラス別スキル】 気配遮断:A サーヴァントとしての気配を絶つ。 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 【固有スキル】 神性 A 神霊適性を持つかどうか。 ブードゥー教において死と生とセックスを司るゲデの神性は最高クラスと言えるだろう。 話術 B 言論にて人を動かせる才。 挑発や扇動や欺瞞に優れている。 反骨の相 B 他者を翻弄することに愉しみを見出す性質。 同ランクまでの「カリスマ」を無効化する。 【宝具】 『汝秘密を隠せず(エクスポージャー)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:1人 発動することでレンジ内の対象の精神に侵入して制御を奪い、あらゆる言葉を話させる。 トラウマや秘密であれ憑依に成功していれば本人の意思の有無に関わらず話させることができる。 また侵入ターンに比例して憑依対象者の記録を盗み見ることができる。 対精神干渉系で対処可能。 【weapon】 『ステッキ』 紳士のたしなみ。殴る突くもできる高価な紳士の装備。 【解説】 ブードゥー教において死と生とセックスを司るという死神。もしくは、それらの概念の総称。 この鯖の場合は神ではないという解釈のもとで召喚された。 容姿はいわゆる紳士風貌。黒い燕尾服に山高帽子。タバコと酒が好き。 彼は陽気な性格の持ち主であるというが、誰かに憑りついて秘密をばらしたり、権力者を馬鹿にしたりすることに面白みを感じるという。 彼の容姿や行動がいわゆる金持ちそのものであるのは一種の風刺であるとも言われている。 口調や行動は容姿とは裏腹に下品であるらしい。 召喚すると日常的に皮肉と嘘をつきまくる。下ネタも自重しない。 召喚者の知られたくないことをほかの鯖やマスターにばらしまくる。 わりとキレ易い凛とは相性が超絶最悪。
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【元ネタ】史実 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】マーチャーシュ1世 【性別】男性 【身長・体重】179cm・64kg 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具C 【クラス別スキル】 気配遮断:D サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。 【固有スキル】 変装:B+ 物理的方法によって見目を装う変装技術。 暗殺者ではないので、アサシン能力「気配遮断」を使えないが、 偽装技術の延長としてサーヴァントであると認識させる事を防ぐ。 カリスマ:C 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。 カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。 【宝具】 『正義たる我、悪を誹謗す(フネドアラ・ドラクリヤ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 ヴラド3世を“悪魔の子”とした喧伝。 自身に向けられた悪評を、悪名の喧伝によって対象へ移し変え マーチャーシュは常に清廉潔白な「正義王」であり続ける。 一定以上の悪評を受けた対象は、E-ランク相当の『無辜の怪物』スキルを獲得する。 このスキルは喧伝者本人にも解除不可能。 対象の悪名が高まるほど、完全な怪物に堕ちるまで、ランクが向上していく。 【解説】 通称マティアス・コルヴィヌス。本名フニャディ・マーチャーシュ。 中世ハンガリー王国の最盛期を築いた「正義王」。 中央集権化を進めて強力な常備軍「黒軍」を置き、欧州へ勢力を伸ばした。 ウィーンを陥落させてオーストリア大公国を支配下に収めたが、跡継ぎ無く49歳で急死。 王の死後、ハンガリーは再び敗北の日々に戻ることとなる。 ルネサンス文化を奨励した知識人、ハンガリー黄金期を築いた偉大なる王、 という面の一方で、同盟関係にあったヴラド3世の残虐さを強調し 十字軍を放棄するなど、ある意味ではブラム・ストーカーの先達ともいえる人物でもある。 身分を隠して国内を回った伝説が伝わるなど、民衆からの人気は今も非常に高い。
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あ行 アーチャー(人名/サーヴァント) 209cm・111kg 涜神の王、ニムロド。 『旧約聖書』におけるノアの子孫であり、クシュの息子。 クシュの父はハム、その父はノアである。 万能の狩人。バベルの塔建設の監督者であり 勇敢な狩人、地上で最初の勇士であると同時に、アッシリア全土を支配した暴君、人類最初の君主とされる。 アラビア語ではナムルード。 アラブの伝説では、アブラハムが生まれた頃世界を支配した王とされ、 悪魔イブリースにそそのかされて魔術や偶像崇拝を行っていたとも。 また、父クシュからアダムとイヴがエデンから追放されていた時に身に着けていた魔法の皮を受け取る。 これを身に着けると動物はその姿を認めただけで倒れてしまい、彼と格闘して人間もいなくなったという。 強大な力を手に入れたニムロドはやがて邪心に取り憑かれ 世界を支配したニムロドは今度は神になろうと手下を使ってバビロニアに巨大な塔を建設し始めた。 これが所謂バベルの塔である。 人間を天国に侵入させ、略奪を行い、天を乗っ取ろうとし、順調に塔は高くなり、昇るのに一年もかかるが頂上は天に届いた。 人間は頂上から雲の中へ矢を射て、射られた天使は血を滴らせながら血に落ちる。 これに怒った神は、塔の建設を終わらせる為に当時の唯一の言語であったヘブライ語を多くの言語に分け 意思の疎通の出来なくなった人々はやがて仲たがいを始めた。 これにより、それ以上塔が高くなる事はなかったという。 性格は傲慢で凶暴、そして残酷。 人間としての能力は穴だらけだが、自己の強さは何者をも凌駕している。 苦悩が刻まれた貌と長き時を闘いに費やした強靭な執念と妄執が、対峙した者に嘔吐感に似た重圧を与える。 かつては自らを神にもなぞらえるほどに欲深く、天に侵攻しようとまで考えたが 当時は神への信仰深い人物でもあった(はなはだ身勝手で独善的な思想ではあったが) だが前述の神罰によって、彼は地位も名誉も、全てを失い辱められ絶望する。 当時の記述に詳細な記録は残されていないが、死後は世界との契約により 神という存在を憎み己の手による復讐の道を辿っていく。 宝具はリヴァイアサンの思念が宿った『天に逆巻く海淵の裘(レ・ディヴィヌス・ペラガス)』 と バベルの塔『惑乱の塔は天高く栄える(タワー・オブ・バベル)』 の2つを有する。 アヴェンジャー(人名/サーヴァント) 168cm(偽)・60kg(偽) 真名はアンチキリスト 〈キリストの敵〉の意で、ギリシア語ではAntichristos。 世界終末のキリストの再臨前に出現して教会を迫害したり世を惑わす偽預言者 見目麗しい容姿を持ってキリストの再臨前に世に現れ、 世に出て最初のうちは善行をなし正に英雄として振舞い、 偶像崇拝者を倒し、さまざまな奇跡を行い人々より多くの信頼を得る。 そして、彼が聖人として認知された後、「666」と呼ばれる計画を行使 世界を退廃と堕落の荒野へと変え、そして彼は人々にこう宣言する。 「我は我が与えし印を持たぬものを救わぬ」と。 そうして世界は闇に覆われ全ては彼の手中へと収まったかと思われた時、キリストは再臨し 世界は救済される。 性格・容姿・素性。 全ての詳細が不明の謎に包まれた人物。 その正体は、黙示録で予言された終末の前に現れる反英雄。 実在の人物ではなく、現象のような存在であり、時代・場所など条件によって 形が変わる朧(おぼろ)な架空の事象。 共通しているのは、予言に記された人物像と行動原理、そして敗北主義者であることである。 戦闘能力は英霊にあるまじき低さであるが、人心掌握と処世術は宝具によらぬものとしては最高クラス。 特筆すべきは不完全ではあるが、奇跡の一端を行使できる点だろう。 望むがままに他者の望みを叶える、文字通りの奇跡、仮初めの幻影であり、使用条件も厳しいが それを鑑みても、破格の異能であることは揺るがない。 なお、本物の奇跡を行使できた人物は歴史上10指に満たず、古来から魔法に最も近い異能の一つだといわれている。 第五次聖杯戦争において、ライダーの手引きによって三枝由紀香に召喚される。 彼女の影響を大きく受け、此度は年若い少女の姿で現界し、日常と非日常の狭間で揺れ動く。 ライダー同様に、終末の到来を実現させるため、冬木市市民の煽動、情報操作、武器調達など 短期間で市民の過半数を指揮下において、混沌と絶望の坩堝へと誘う。 だが、キャスターとの水面下でも協約や、由紀香への思慮など前述の行動原理に反する行いもしている。 イレギュラー 聖杯によって実現されようとされる終末において、ニムロデが語っていた 三つの障害となりうる存在。 一つはランサー・アキレスの存在である。 此度の聖杯戦争に呼ばれたサーヴァントは、いずれも聖杯によって意図的に呼ばれた 英霊たちであり、それぞれが意味と役割を持っている。 だが、アキレスは凛が用意した強力な触媒と、彼女自身の優れた手腕による完璧な召喚によって 聖杯の介在を跳ね除けて呼び出したためである。 2つめは、衛宮士郎。 彼がいずれ守護者と成る存在であるため、ニムロドは強く警戒していた。 なお、なぜ彼が士郎の守護者としての適正を見取ることができたのかは不明である。 最後は、間桐桜。 歪められた聖杯戦争の特異点。 全ての始まりにして、全ての終わり。 間桐の翁によって、原罪と死極の矢を取り込んだ聖杯の欠片を埋め込まれ マザーハーロットとの結節点を得る。 大聖杯、龍脈、および間桐桜を通じて冬木市は徐々に汚染を拡大させていった。 原作同様に、聖杯としての機能を有するが、バベルではより不安定で禍々しい仕様となっている。 もし、英霊の魂を取り込んでいった場合、どのような変貌を遂げるのかまったくの未知数だ。 衛宮士郎(人名/魔術師) えみや しろう。 身長167cm。体重58kg。 穂群原学園2年C組。 第五回聖杯戦争におけるキーパーソン。 本作では、資格はあったもののマスターではない。 家事に並々ならぬ才能を持つ。家庭料理(中でも和食)が得意で、おいしい食事を作るには材料をケチらない。 英語が苦手。工作に没頭する性格。 剣製に特化した魔術回路を所持する一点特化の魔術使いであるが、今現在はまだ回路の起動もできない。 ほかに物の構造・設計を把握することに特化している(構造把握の魔術)。 体内に27の魔術回路を持つが、それは作ったものを使わなかったために放棄され、通常の神経が魔術回路になっている。 本人はそれを知らず、鍛錬のときは死の危険を犯して魔術回路を作ることから始めていた。 8年間続けている魔術の鍛錬は自分が楽しいからしているのではなく、 魔術を身に付ければいずれは誰かの為になると思ってのこと。 10年前の大火災から唯一人生還したことで死んでいった人たちへの償いをこめ、 衛宮切嗣の遺志を継いで正義の味方に憧れて人助けに奔走するが、 それは反英雄としての切嗣とは違って自分を犠牲にして他のみんなが幸せになるというひどく歪んだもの。 彼の価値観には『自分を優先する』ということがない、 というよりも大火災から唯一生き残ってしまったために自分を優先する資格がないと思っている。 人助けはその見返りを求めるのではなく『人助け』そのものを報酬としている歪んだ価値観の持ち主。 大切な目標以外には興味を持たない、持てないという頑固というか遊びのない性格。 目に見える範囲の不幸や不平等を正そうと努力するが、かといって無条件で助けるわけではなく、 本人がそれを打破することに意義があると判断した場合は陰ながら見守る。 本当の両親は一般人で、前回の聖杯戦争の折に聖杯戦争の参加者たちが引き起こした大火災によって死亡。 本人もそのときに瀕死の重傷を負うが座礁した前アーチャーの手によって蘇生し、その後、衛宮切嗣に引き渡される。 バベルの塔の一部が崩御した後、言語の乱れ、秩序と理性の混濁化が進む冬木市内で 街の異常事態を察知し、単身で新たに聳え立つバベルの塔へと事態収束のために乗り込む。 その際、言峰神父との邂逅を果たし、聖杯戦争の基本知識を知り、サーヴァント、セイバーと供に 敵地侵入をし、その折に、襲撃してきたライダーとの戦闘を経て、彼女に囚われていた凛との合流を果たす。 か行 神の座(用語) 根源の渦。 あらゆる出来事の発端となる座標。 万物の始まりにして終焉、この世の全てを記録し、この世の全てを作れるという神の座。 世界の外側にあるとされる、次元論の頂点に在るという“力”。 根源の渦に至るという願いは魔術師に特有のものであり、これは世界の外側への逸脱である。 かつて、ニムロドが挑んだ宙の外へと逸脱せんと天を貫く塔を築いて挑んだ。 キャスター(人名/サーヴァント) さ行 終末(用語) 終末論(しゅうまつろん)は、歴史には終わりがあり、それが歴史そのものの目的でもあるという考え方。 目的論という概念の下位概念。 様々な宗教に共通して存在する世界の終わりであるが バベル内で発生した現象はクリスチャンである言峰神父の願いが発端であることから キリスト教の終末論、イエス・キリストの復活と最後の審判への待望という事柄に関わるものであると 推察されるが、詳細は不明である。 このキリスト教における終末論とは 現在の天地万物にみられる事物の体制が終わりを告げ、 新しい体制の中に生まれ変わる時のことを、意味していると考えられている。 神霊(用語) 神と崇められる自然霊。信仰を失うと精霊の位に落ちる。 発生に人間の想念が関わっていながら、人の意思に影響されずに生まれたもの。 なお、ニムロドが恨む神とは別であり、彼が憎んでいるという存在は世界の中枢。 天上の神の座を守護する番人――――すなわち抑止の力そのものである。 聖杯(用語) 冬木市に伝わるものは、神の血を受けたものではなく古来より伝わる願いを叶える『万能の釜』が原型で、 その力は伝説のものに匹敵する第726聖杯。根源へ至る門。 願望機である大聖杯に繋がる孔にして炉心。大聖杯起動の鍵。 万能の釜そのものではなく、始まりの御三家によって造られた願望器のレプリカである。 その中身の本質は“無色の力”だが、第三回聖杯戦争以降はアンリ・マユに汚染されて 悪性の“力の渦”(呪い、第三要素)になっている。 よって精密な計算・相互作用による矛盾の修正などは絶対に不可能であり、 持ち主の願いをあらゆる解釈による破壊のみによって叶える。 また、ひとたび開けてしまえば際限なく溢れ出し、災厄を巻き起こす。 さらに第四次聖杯戦争において、『聖者の嘆き(ロンギヌス)』 の原罪を混入され 言峰の終末到来の祝詞を受諾し、世界根絶のために力を費やす災厄の器と成り果ててしまう。 その際、この世全ての悪(アンリマユ)とは別にマザーハーロットを孕むことになる。 セイバー(人名/サーヴァント) 167cm・56kg 真名はエルキドゥ バビロニア神話。「ギルガメシュ叙事詩」の英雄。もともとは、シュメールの神話、伝説を起源とする。 もとは神に生み出された泥人形であり、人智を超えた力を持ちながらも知性も性別も無く、 ただ森の獣たちと戯れる生活をしていた。 だが聖娼と名高い女と六日七晩過ごすことで人間の姿と知性を手に入れ、黄金の王との死闘の末にその無二の友となる。 その後は、ギルガメシュと怪物フワワ(フンババ)や天の牡牛グアンナを倒すなど行動を共にした。 しかし、天の牡牛を倒した時、女神イシュタルによる嫉妬が彼の運命を決めてしまった。 後日、神々は天牛を殺した償いとして、二人の英雄のうち、より罪深い方の死を望み、 大気神エンリルの意向により、エンキドゥは呪いで衰弱して死んでしまった。 質素な貫頭衣を身に着けた、きわめて中性的な姿をしている。 その容貌は端麗ながら、雰囲気は人間的なものではなくむしろ魔術師が作る『人形』に近い。 武器は己の身体と『創生槍・ティアマト』 。 獣の言葉も使うことができ、気配探知スキルは最高クラス。 本来は英雄というより神が使用した宝具そのもの。 バベル歴代において最強のサーヴァントであり、個人の単純な性能に絞れば英霊最高位。 かの英雄王のこの世全ての財による万有の力に対して、単一で万能の力を有する。 これは、女神アルルが泥から創造し戦争の神ニヌルタが、神々すら畏怖する王に対抗するために 万能の神の力、あらゆる生命の原典の因子を与えられたことによる。 もっとも、彼自身はその出自を快く思っておらず、今を生きる生物に対して強い敬意と羨望を抱いている。 これは彼がこれまでに歩んできた生の中で、厳しい環境下で弱く儚くも精一杯に生きる 強く気高い彼らの心に深い感銘を受けたためであろう。 そう、彼の願いは、模倣によって得た仮初めの心と身体ではなく、一つの生命として地に根を張ることである。 また容姿に対して人形と揶揄されることがとても嫌いでもある。 前アーチャー(人名/サーヴァント) 166cm・64kg 真名はアシュヴァッターマン 『マハーバーラタ』の戦争でシヴァと戦った兵士。 パーンダヴァ五王子とカウラヴァ百王子に武芸を教えた師、ドローナの息子。 2人の王子間による大戦の際、百王子軍に参戦する。 五王子軍の軍師クリシュナの姦計により、 父ドローナはドゥリシュタドゥユムナに殺され、百王子軍もほぼ壊滅。 復讐に燃えるアシュヴァッターマンは、 クリパ,クリタヴァルマンと共にパーンダヴァ陣営に夜襲をかける。 まず自分の父を殺したドゥリシュタドゥユムナのテントに入り首を刎ね、 陣内にいる者を皆殺しにした。 その時、英雄アシュヴァッターマンは自らのヴィマナに断固とどまり、 水面に降り立って神々すら抵抗しがたいアグネアの武器を発射した。 神殿修道騎士団長の息子は全ての敵に狙いを付け、 煙を伴わぬ火を放つ、きらきら輝く光の武器を四方に浴びせ 五王子、クリシュナ、サーティヤキらを除く五王子軍を全滅させる。 それはまさにユガの終わりに一切を焼き尽くすサンヴァルタカの火のようであった。 まるで広島・長崎の原爆を思わせるこのアグネアの内容はまぎれもなく遥か昔、 紀元前に記された内容なのである。 その後、アシュヴァッターマンは遂に敗北を認め、 頭についていた不思議な宝石をビーマに渡して森へ去っていった。 誇り高き戦士。 善悪に囚われず、自らの魂の赴くままに生き、復讐にその身を焦がした炎のように熱い男。 戦場では粗暴で暴力的な性格だが、根は正義の人で人懐こい悪戯好きの好青年。 回りくどい方針と裏切りが嫌い。好き嫌いと敵味方はまったく別物と考えている。 武勇にも優れた戦士ではあるが、彼の真骨頂は頼みとする宝具と、予測不可能なトリッキーな頭脳である。 古代インドの空中機動兵器。 アグニ(サンスクリット語で「火」を意味する。)の名を冠する 『陽光宿す天の双翼(ヴィマーナ)』、額に、生まれた時より付いていた宝石『瑞験の星月(カウラヴァ)』 そして、神々が最も嫌悪したといわれる禁忌とされる一つの矢『獄炎秘めし災厄の矢(アグネア)』 の破格の3つの宝具を所有し、マントラ(真言)の力と相まって、大英雄クラスのサーヴァントとも 互角以上に渡り合えるポテンシャルを有する。 特に、彼が自分好みに魔改造したヴィマーナは、破格の機動性能を有する上に 魂魄フィードバックシステム、――常住永遠なるもの「空」とのアクセスを可能とするシステムによって 統覚機能と認識野を一段階昇華、つまり世界と己を一体化させ、可視領域内に補足できる万物の 魂の様々な構造や仕組みを把握することが可能になる。要約すると、究極の探知レーダー。 前回の聖杯戦争で、聖杯の呪いを浴び受肉(前述の魂魄フィードバックシステムによって、昇華寸前の魂を捕捉させ この世に無理やり呼び戻した) 以後は、言峰と袂を分かち、日がな俗世で2度目の生を謳歌していたが、イリヤスフィールによって 箱庭へと強制拉致され、ぶつぶつ言いながら彼女の束の間のままごとに付き合っている。 た行 天の杯(魔法) ヘブンズフィール。第三法。 現存する魔法のうちの三番目に位置する黄金の杯。 アインツベルンから失われたとされる真の不老不死を構造できる御技、魂の物質化のこと。 過去にあった魂から複製体を作成するのではなく、精神体でありながら単体で物質界に干渉できる高次元の存在を作る業。 魂そのものを生き物にして生命体として次の段階に向かうもの。 遠坂凛(人名/魔術師) 2月3日生まれ。身長159㎝。体重47㎏。B77 W57 H80。血液型O。 遠坂家六代目当主。私立穂群原学園2年A組。朝が弱い。第五次聖杯戦争におけるランサーのマスター。 父である遠坂時臣を師とし、言峰綺礼は兄弟子。属性は『五大元素』。 得意な魔術は魔力の流動・変換だが、戦闘には適していないために戦闘には魔力を込めた宝石を使用する。 優秀だが、ここ一番というところで大ポカをやらかすことがあるのはもはや遺伝的なものであり なにか説明するときにかける黒縁眼鏡は伊達。 桜が間桐にもらわれていくときに髪留めを贈ったが、そのときも対価を要求した。 というのも、凛は大切な人にこそ貸しを多く作って繋がりを持っていたいがため。 ただし借りに関してはきちんとした借用書でもない限り認めようとしない。 幼少の頃から、冬木市の異常事態を察知し、独自の調査活動をする。 だが、龍脈の異常汚染は判明できたが、大聖杯と桜の存在に至ることは叶わなかった。 言峰綺礼から、ある程度の情報は聞き及んでおり、聖杯戦争への参加目的は 原作よりも、遠坂家の悲願だけでなく、管理人としての事態収束のために強い勝利への渇望がある。 その執念の賜物か、触媒と完璧な召喚の儀式によって、自身の望む最速のサーヴァントを呼び込むことができた。 だが、経験不足と事態の予想以上の深刻さに焦りを生み出し、バベルの塔内部にて初戦を敗北。 その後、間桐桜との邂逅の際に違和感を抱いた彼女は、後を追い間桐邸に乗り込み ライダーと遭遇。人身お供として拉致され、再びバベルの塔内部に連れ去られる。 後に、塔内部へと侵入していた衛宮士郎とセイバーに救出され、行動を共にする。 は行 バーサーカー(人名/サーヴァント) 182cm・80kg 真名はカルキ。 ヒンドゥー教に伝わるヴィシュヌの第十番目の化身にして最後のアヴァターラ。 その名は「永遠」、「時間」、あるいは「汚物を破壊するもの」を意味し 白い駿馬に跨った英雄、または白い馬頭の巨人の姿で描かれる。 西暦428899年の末世(カリ・ユガ)にシャンバラ村のヴィシュヌヤシャスという バラモンの子として生まれるとされており カリ・ユガ(Kali Yuga)と呼ばれる世界が崩れ行く時代に現れ、 そして世の全ての悪を滅ぼし、新たな世界、黄金期(クリタ・ユガ)を築くとされる。 バベル歴代において最優のサーヴァント。 維持神の化身であり、霊長の存続、すなわち抑止力そのものの分体である。 御神体であるカルキが人間界で存在を確立するために構成された人型の器であり 自我・精神を持たず、彼の乗騎たる機動白馬『System K.A.L.K.I(ハヤグリーヴァ)』 によって 世界から発信される危機信号を受信し、目的を完遂させる。 その力は絶大であり、かつてセイバーのクラスとして参加した第四次聖杯戦争では 前アーチャーを除く、単独で五騎を相手にして勝利を収めた。 完全である神の力、世界からのバックアップを有するカルキはあらゆる障害に対して 有効な手段と方法で対処が可能であり、彼を排するのは世界そのものを破壊するに匹敵するほどの 力か、世界との繋がりを遮断させるしか手段はない。 なお前回では、原罪を取り込んだ聖杯の孔を破壊するために放った前アーチャーの『獄炎秘めし災厄の矢(アグネア)』 の余波から人々を守るために自身を盾にしたためである。 そのため、被害は街の一区画という極小へかなり抑えられ、役目を終えたカルキは次の戦場へと還っていた。 奇しくも、その戦場は10年後の冬木市であり、前回同様アインツベルンの参加者として闘いに身を投じるのであった。 バベル外伝 バベル本編の外伝。 息抜きのために書かれたギャグss。 本編とはうって変わって、セリフ主体のテイストで下ネタが多い。 主人公はアシュヴァッターマン。 ヒロインはイリヤとアンチキリスト。 なお、途中から本編とリンクした裏側の物語、The Tower, La Maison de Dieu backnight が始まる。 副題は花言葉で、それぞれ Taraxacum officinale 「真心の愛」、「思わせぶり」 Helleborus、「私を忘れないで」 である。 バベルZERO 本編の10年前、第四次聖杯戦争の話。 作者の悪い癖で、行き詰ったときに妄想して構想された物語。 コンセプトは昼ドラ。 始まりと終わりは原作と同じで、マスターに割り振られた鯖のクラスも同じ。 登場サーヴァントは以下の通り セイバー カルキ ランサー ベイリン アーチャー アシュヴァッターマン ライダー チンギス・ハーン バーサーカー ピサール キャスター エリザベート・バートリー アサシン キルロイ なお、本編、間章5において、最終決戦カルキVSチンギス・ハーンVSアシュの三つ巴 が描かれている。 また、当初はシグルドとブリュンヒルデが参加予定であった。 バベルの塔の狸 本作、皆鯖WIKIで連載されているss。 前作、FateMINASABA 23th 00ver連載時、登場予定のネブカドネザル2世が製作中であったため それまでの読みきりとして、中篇ssの予定で書かれた。 当初はソロモンVSニムロドVSマザー・ハーロットであった。 だが、書いてるうちに作者が本気で書き始めたため、長編ssとして連載が続くことになる。 コンセプトは鬱サスペンス。バッドエンド症候群に悩まされた作者によって気色の悪いテイストになっている。 主人公はニムロドと士郎。 ヒロインは桜と由紀香、マザーハーロット。・・・・・のつもり。 登場サーヴァントは以下の通り セイバー エルキドゥ ランサー アキレス アーチャー ニムロド ライダー マザーハーロット バーサーカー カルキ キャスター ソロモン アベンジャー アンチキリスト 前アーチャー アシュヴァッターマン ま行 埋葬機関(組織) 聖堂教会の切り札ともいえる吸血鬼専門の異端審問機関。 神への信仰は二の次で、ただ異端を抹殺する力さえあればよいという強面の部署。 メンバーは形式だけでもアデプトで扱いは司祭級、さらに特別権限を持つ異端審問員。 ただし彼らが形式的な異端審問をすることなどないので、単に代行者、または殺し屋とも呼ばれる。 メンバーの証として普段は見えない羽の生えた十字架(剣)の刺青を施す。そこに刻まれている数字が機関でのナンバー。 たとえ大司教でも悪魔憑き、異端ならば処刑する権限と実力を持っているために、教会でも厄介者扱いされている。 この機関こそ教会における異端と囁かれるのも当然だろう。 全吸血鬼の排除と因となる二十七祖の封印を目的とするが、もとは聖遺物の収集をしていた。 完全な実力主義制で、能力があり教会にとって都合の悪いモノを始末するのなら誰でも一員になれる。 ただし年功序列が根強い。 1位から7位の構成員と1名の補欠で構成される。 1位は代々ナルバレックで5位がメレム・ソロモン、6位がミスター・ダウンとその相棒(ミスター・ダウン単独では暫定6位) 7位がシエル。補欠は教会から優れた者をスカウトするが、審問のたびに死亡する為にめまぐるしく交代する。 メンバーには表立っては禁忌とされる魔術を好む者、捕らえてきた異端者を奴隷として扱う者、 近代兵器マニアや殺人快楽性となかなか飽きさせない人材が集まっている。 また、埋葬機関のメンバーはサーヴァントと渡り合うことができる(シエルは防戦レベル)。 今回の聖杯戦争は、聖堂教会において、最も忌むべきものであり、待望となる悲願であった 教義における終末が発生するとの情報を受け、渡航可能な総戦力を冬木市内に送り込む。 埋葬機関も例に漏れず、5位のメレム・ソロモン、6位のミスター・ダウン、7位のシエルが派遣される。 奇しくも同時期に、白翼公トラフィム・オーテンロッゼが何十年とかけて用意してきたアルズベリの儀式が 開始されたため、他の構成員はそちらに行っている。 彼らの冬木への派遣選抜の理由は、単にナルバレックの嫌がらせ。 間桐桜(人名/魔術師) まとう さくら。 3月2日生まれ。身長156㎝。体重46㎏。B85 W56 H87。血液型O。Eカップ。 第五回聖杯戦争におけるライダーのマスター。 穂群原学園1年生。弓道部員で、弓道は衛宮士郎の影響で始めた。 間桐慎二の義妹。今代(最後)の間桐の魔術師(候補)。マキリの聖杯の実験作。 遠坂凛の妹だが、十一年前に後継者がいない間桐に養子に出された。 髪を結んでいるリボンは凛が最初に作ったもの。 本来の属性(起源)は架空元素(虚数)で遠坂の魔術師としてならば大成しただろうが、 間桐の属性である水に変えられたために魔術師としては衛宮士郎なみ。 原作では刻印蟲に魔力を喰われるため、魔術の起動は出来なかったが バベルでは、感情が昂ぶった際に架空元素を起源とした『黒い影』の具現化ができる。 臓硯もその事実を把握していたが、冬木市の治安悪化による万が一の危険に備え、止むを得ず黙認をしている。 目も髪も遠坂の色ではなくなるほど初期(五歳くらい)に身体をいじられており、 その心臓には間桐臓硯の魂の器である本体が寄生している。 10年前に監視用および聖杯の器にするために、第四回聖杯戦争の最後で破壊された聖杯の欠片を触媒として 生み出された刻印虫を体内に植え付けられた。 その際にマザーハーロットとの結節点を取得し、自身の意思とは無関係に 周りの人間の理性を簒奪し、『黒い影』の侵食を続けていく。 また、魔道の伝承のために十一年前から性的虐待を受け、魔道とは関係なしにたびたび間桐慎二に暴行を受け、犯されている。 だが何をされようと隠そうとする。 間桐の魔術師にされたために魔術師の精がないと体が火照っておかしくなってしまう。 原罪など、より純度の高い呪詛を孕んだ聖杯の欠片とマザーハーロットの影響で 原作よりも感情的で不安定であり攻撃的。 彼女自身が、邪悪の呪詛を取り込んでいるため、負の感情に対する高い耐性を得ていたためと考えられる。 だが、絶えず微弱な呪詛を撒き散らすため、彼女の周りには悪辣なトラブルが耐えない。 仲の良い友人で、三枝由紀香、美綴綾子、衛宮士郎がいる。 聖杯戦争直前に、不良グループによる強姦事件の被害にあい、半日もの間輪姦され その後、座礁して海岸で体を休めていたところを間桐臓硯によって、半ば強制的に召喚の儀式を執り行い ライダーを召喚する。 彼女を呼んだことによって、体内の聖杯の欠片が活性化し、ライダー自身の禍々しい魔力と相まって 精神を病む。 そのため、苦肉の策として『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』 の力によって意識を混濁化させることによって 汚染侵食の緩和措置を取られた。 間桐慎二(人名) 身長167㎝。体重57㎏。 弓道部副主将。間桐鶴野の息子で間桐桜の義兄。穂群原学園2年C組。 ナルシストで天才肌。極めて自己中心的で自意識過剰な性格で他人を見下す。 弓の腕前はなかなか上手なのだが、本人は暇つぶしと言ってはばからない。 第四次聖杯戦争中は遊学の名目で国外に出されていた。 桜が養子に来たときは多少は苛めながらもかわいがっていた。 しかし間桐の後継者が自分ではなく桜だと知った時、 『生まれを憐れんでいたのは自分ではなく桜の方だった』と思い手酷い暴行を働くようになった。 だが、内心では桜を酷く恐れている。 魔術師としての才能はないが、一般の人間としての才能は多分にある。 それだけに魔術師としての才能がないことを気に病み、鬱屈していき、周囲の人間を見下すようになった。 間桐桜から流布される呪詛によって、徐々に精神を病んでいく。 精神の安定のためか、原作より女遊びなど派手な享楽を繰り返しており、精神科に通院している。 最後は、意識が混濁化した桜の妄言に、ストレスが臨界点を超え暴行する。 その折に、衛宮士郎に彼女の真実を話すと挑発したため、逆上した彼女に殺害された。 ら行 ライダー(人名/サーヴァント) 167cm・53kg 真名は不明。 マザー・ハーロット、「地上の忌むべき者や売春婦達の母たる、大いなる、謎めいたバビロン」。 「グレート・ハーロット(The Great Harlot="大淫婦"の意)」とも呼ばれる。 キリスト教における黙示録に出現し、もろもろの民族、群衆、国民、国語の上に立つ 人々を惑わす悪徳の象徴とされる美女。 『黙示録』によれば“悪魔の住むところ”であり“汚れた霊の巣窟”である。 女性の姿で表されておりきらびやかな装身具を身につけ、手に金杯を持つが、 その杯は姦淫による汚れに穢されているという。 大淫婦は殉教者の血を流すが、神のさばきによって滅ぼされるともいわれる。 新約聖書『ヨハネの黙示録』によると、終末の時、地上に邪悪な獣に跨って姿を現れる。 これ等には明確な名前が付けられておらず、その多くは謎に包まれており その為か多くの文献では黙示録の獣、あるいは666等として紹介されている。 バベル歴代において最悪のサーヴァント。 第四次聖杯戦争において、この世全ての悪(アンリマユ)・聖槍の原罪 そして、言峰による 「見よ。まことにわたし(神)は、新しい天と新しい地とを創造する。 先のことは思い出されず、心に上ることもない。だから、わたしの創造するものを、いついつまでも楽しめ」 という世界の終わりを聖杯に願ったことによる触媒によって、現世に召喚された反英雄である。 もっとも当初は、冬木の街に土着した現象的な形のないものであり 着々と人々の悪意を煽るなどの終末到来のための暗躍を行い、第五次において間桐桜によって召喚され肉体を得る。 正真正銘の邪悪な英霊。 本来は英霊に収まる霊格ではなく、神霊といった方が相応しい。 老若男女問わず誘惑し、堕落させ破滅に追い込む悪徳の華。 笑うと途端に邪気のない聖女のように清らかな表情になる。 宝具は『溢れる邪淫(ルクスリア・チャリス)』 と『黙示録の獣(アポカリプティック・ビースト)』 を有し 特にこの黙示録の獣は、赤き竜より同等の力と権威を戴き、次元違いの力を有する。 呪力の純度は、世界から供給される大源(マナ)と悪意によって大きく上限するが 龍種と同等の力も有しているため、単一でも生半可な英霊では太刀打ちはできず、 審判の日には、天を貫き、大地を腐敗させ、あらゆる生命を死滅させるほどの権威と力を得られるという。 また、彼女自身も「原初」の力を有しているとか。詳細は不明。 ランサー(人名/サーヴァント) 167cm・58kg 真名はアキレス。 イリアス叙事詩の主人公。プティアの王ペレウスと海の女神テティスの息子。 数多くの英雄が激戦を繰り広げたトロイア戦争において、最強の英雄としてその名を讃えられている大英雄。 生まれてから間もなく、母によって冥界を流れるステュクス河の水に全身を浸され不死身となる。 その際に、踵を掴まれていたために唯一の弱点となってしまったアキレス腱の逸話はあまりにも有名だろう。 トロイア戦争の時、アガメムノーン王がアキレウスの妻プリセイスを連れ去ろうとしたことで戦場から去ってしまう。 その後苦戦したアテネ軍からアキレウスに謝罪と参戦を請う使者が来て、 最終的には戦線に復帰し敵側の最強の英雄ヘクトールを倒す。 そして女神エオスの息子メムノンを殺し、トロイア軍を城市まで押し戻しスカイアイ門から入ったところで アポロン神により狙いを定められたパリスのはなった矢に弱点の踵を射られ、さらに次の矢を胸に受けて戦死した。 これにより両軍共に大黒柱を失った形になり、その後の戦局は混迷を極め 死後、アキレスの魂は英雄たちの楽園であるエリュシオンに迎えられたとも、 冥府でオデュッセウスと会見したとも言われる。 容姿は、金髪、碧眼、薄い唇の美男子で、剣、槍、弓矢の腕にも優れ、 さらに素手であっても、どんな敵にも勝てたという。 また、「足の速い」アキレウスとも呼ばれ、父から譲り受けた馬、バリオスとクサントスを除いて、 どんな馬よりも速く走れたといわれる。 バベル歴代で最速のサーヴァント。 名立たる英雄と、神々・幻想種があたりまえのように存在した神代において 無双を誇るまでに到達した無窮の駿足は、地に足を下ろしている限り、慣性の法則に縛られぬあらゆる制動を可能とし その速度は最高で、地球の自転速度に並ぶほど。 彼の願いは、自身の人生に後悔はないが、生前の若さゆえの浅慮な行動を恥じており、次の生を得たときは よく深く思慮し、強く正しい道を進むことを望んでいた。 時に厳しく、時には優しく接する、戦士としてもサーヴァントとしても非常に高潔で優れた人物であり 凛という最高のパートナーを得たことにより、此度の戦場においても輝かしい栄光が得られるはずであった。 だが、この歪んだ聖杯戦争において、彼の力は十二分に発揮することは叶わず 盾にされた凛を庇った隙をつかれ、アーチャーに腱を射られて敗北してしまう。 六道(用語) 六道(りくどう)とは、仏教において迷いあるものが輪廻するという、6種類の迷いある世界のこと。 すべての衆生が生死を繰り返す六つの世界。 迷いのない浄土に対して、まだ迷いのある世界。 地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道。前の三つを三悪道、あとの三つを三善道という。 仏教では、輪廻を空間的事象、あるいは死後に趣(おもむ)く世界ではなく、心の状態として捉える。 たとえば、天道界に趣けば、心の状態が天道のような状態にあり、地獄界に趣けば、 心の状態が地獄のような状態である、と解釈される。 なお一部には、天狗など、この輪廻の道から外れたものを俗に外道(魔縁)という場合もある (ただし、これは仏教全体の共通概念ではない)。 地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天。などのカルマに支配された六種の衆生が、 生命の輪廻の輪の中に表されている。 アシュヴァッターマンによって放たれた『獄炎秘めし災厄の矢(アグネア)』 ベイリンによって混入された『聖者の嘆き(ロンギヌス)』 の原罪 聖杯に眠るこの世全ての悪(アンリマユ) 第五次聖杯戦争に召喚されたアキレスとカルキを除くサーヴァント、守護者 聖杯降誕の地、冬木市と生命。 神と崇められる自然霊。 位階を別にする六道を揃え、然るべき手順と儀式を行った人間は この輪廻の輪を断ち切ることで解脱が得られるという。 これほどの純度の触媒と、聖杯を持ってすれば、確実に天上の神の座へと届くだろう。 ニムロドと臓硯は、最大の障害となる抑止力(閻魔)の目を逸らすだろう終末の日の中で 儀式を行う腹積もりである。
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夜の新都、ビルの屋上に、二人の人影が立っていた。 「どうしても、魂喰いをやめる気は無いのか?慎二」 正義の味方を目指す魔術師見習いの少年、衛宮士郎は眼前に立つ悪友に問いかけた。 「くどいな。僕にはやりたい事と、やらなけりゃならない事がある。魂喰いはその一つだ」 かつて魔術師を目指していた少年、間桐慎二は、偽臣の書を握りしめ、迷い無く言い放った。 「やらなくちゃいけない事っていうのは、桜の事か?」 「さあね、想像に任せるよ」 その時、慎二のすぐ傍に、飛行服を着た白人が出現した。幽世の存在、サーヴァント。騎乗兵の役を与えられた男だった。 「やあ、シンジから話を聞いている。君がエミヤシロウだね」 敵に対してもにこやかに微笑する男―――普通である。 これまで、士郎とその相棒は、様々なサーヴァントと相対してきた。そのいずれもが、英霊の名に恥じぬ武威と迫力を存在全てから発していた。 だが、目の前のライダーからはそういったものが感じにくい。もっともこれは自分の召喚したバーサーカーにもいえる事例だが。とにかく、このサーヴァントにも言葉を投げかけた。 「あんたは魂喰いなんてして、どうも思わないのか?」 「思うところはあるさ。自分の名と、祖国の名誉に泥を塗る行為だからね」 ライダーの表情から微笑が消え、影が濃くなった。 「しかし、それでも為さねばならないことがあると言えば、君はどう思う?」 「俺は「そこまでだ。ライダー」」 言葉を遮った悪友は、厳しい目で士郎を見ていた。 「お前もだ。衛宮、ここに来たのは話のためじゃない。僕とお前はマスターで、ここには誰もいない。なら、やるべきことは一つだろう?」 慎二の言葉に、士郎も、傍らにサーヴァントを顕現させた。光の粒子が集束し、人型を作り出す。 優雅な束帯。 流水のような黒い髪。 夜海のような黒い目。 ―――美しい子供である。 顕現した英霊は、顔の造作では無く、存在そのものが光を放っているような高貴さと可憐さを持っていた。 正にこの国においての最高の象徴。 人の国に降り立った太陽。 現人神。 衛宮士郎のサーヴァント、バーサーカー。 幼帝が、口を開く。涼やかな声である。しかしその口調には怒りが混ざっている。 「朕(わたし)が治めた神州の民草。その方が民草を傷つけし異人か」 バーサーカーの問いに対し、ライダーも答えた。 「その通りです。天皇陛下」 「やめる気は無いのだな?」 「ええ、正義を勝ち取るには戦い以外ありますまい」 「水天皇、安徳帝言仁である。異国の英雄よ、この場で散華せよ」 バーサーカーの手に握られた剣が、輝きを増す。 瞬間、ライダーが跳躍する。その周囲には風が渦巻いていた。 「ドイツ第三帝国、ルフトヴァッフェ所属、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル―――征くぞ」 風は物体を形作る。それは飛行機の形状となったそれにライダーは乗り込んだ。 空気が変わる。ライダーは今まで相対したサーヴァント達に勝るとも劣らない武威を見せつけた。 ―――然り。 馬を持たない騎士などいない。文字通りの意味での人馬一体ならぬ、人機一体。 あの飛行機―――Ju87、ドイツ第三帝国が誇った急降下爆撃機。それに騎乗した状態でこそ、『ライダー』たりえるのだと、士郎は理解した。 そのままシュトゥーカは急上昇し、上空で点になるまで飛び上がり続けた。 警報音に似た風切りの音。友軍の兵士達からはジェリコのラッパと呼ばれ、敵軍の兵士達からは悪魔のサイレンと呼ばれた轟音が夜空に響き渡る。 「来るみたいだぞ。バーサーカー」 「うむ。こっちに近づいている」 慎二は既に退避している中、ビルの屋上に残っているのは士郎とバーサーカーだけだ。 バーサーカーが剣を構える。かつては持つにも一苦労していた神器は苦もなく振るうことができるようになった。 協力者の力によるものだが、だからこそ彼等のためにも負けるわけにはいかないと、士郎は思う。 決意を新たに空を睨む。 鉄の怪鳥は寸前まで迫り、両翼に顕現した37mmFlak18機関砲が一斉に火を噴いた。 「―――ほう」 ライダーのサーヴァントたる英雄、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルは眼下の光景に少しばかりの驚きを口にした。 飛来した弾丸は、全てバーサーカーたる安徳天皇が身体から発した魔力によって、中空で叩き落とされた。 「やるね、しかし『慣れているとは思えない』」 あれだけの荒技が最初から使えるのであれば、この身が接敵した瞬間に粉々にすることも難しくなかったはずだ。 考えてみればあのバーサーカーは最初見たときから、そのステータスの高さやスキルの多さに比較して、身のこなしや戦略の判断が、どうもチグハグなのだ。 英雄は戦いをくぐり抜け続けた者達だ。 十字軍の勇士として騎士の中の騎士と謳われた獅子心王。 剛力と巨躯を誇るペリシテの巨人兵士。 天帝の子である九つの太陽を撃墜した弓の神。 暗殺教団の伝説を生み出した山の老人達の始祖。 そのいずれとも相対したライダーだからこそ分かる。バーサーカーのあの力は、何らかの方法で底上げされたものだ。サーヴァントを易々と強化できるということは、 「キャスター、か」 ライダーは機関砲を消失させ、別の装備を顕現させた。 「ああ、いい。これこそオペラだ。カイザーを『脚色』したかいがあった」 激戦が行われている場所から離れた別のビルの屋上では、キャスターのサーヴァントが歓喜の表情で右手を振るっていた。 「それでこそだ。カイザー!ドラッへの力を奮い、全ての敵を噛み砕け!!」 「本当にあのナチ野郎に勝てるんでしょうね。衛宮君とバーサーカーは」 興奮するキャスターこと、リヒャルト・ワーグナー。バーサーカーを次元違いに強化した張本人は、背後から怨嗟に満ちた目で自分を見るマスター、遠坂凛を見やった。 「たりめえだ。魔力放出、対魔力、筋力も耐久も敏捷性もパワーアップ、こいつで勝てねえ方がおかしいぜ」 「そう、それならいいけど」 「フロイライン。今はオペラを楽しもうぜ。世紀の天才、ワーグナーの新作オペラだ。感涙モノだぜ?」 「ええ、バーサーカー一人強化するのに、劇場一つ借り切って遠坂家の全資産の半分をマスターである私に無断で使ったかと思うと血の涙が出そうだわ」 遠坂凛にとって、このサーヴァントは召喚した当初から気に入らなかった。 性格に難があるだけでは無く、維持にかかる魔力は通常の三倍。そのくせ魔術は使えない。 そして、凛にとって最大の不幸は呼び出した彼が史実通りの浪費家だった点に尽きる。 凛が戦費として蓄えていた貯蓄は、二日でキャスターの放蕩のために消えた。 そして、キャスターの宝具。『至高なる我が絢爛歌劇(リヒャルト・ワーグナー・フェストシュピールハウス)』を更に豪華にするためと称して、遠坂家が先祖代々受け継いできた土地や宝石、魔道書にまでキャスターは目をつけた。 劇場の彫刻一つのために幾つの金には代えられない宝石が人手に渡ったのか、考えたくも無い。 しかも、宝具に対する効果は、ただ豪華になるだけだと知ったとき、本気で令呪で自決させようかと思った。 しかし、凛は悪夢がまだ終わっていないことを、次のキャスターの台詞で思い知った。 「なーに、ケチなこと言ってんだ。俺が使ったのはフロイラインの全財産だぜ?」 ―――ハ?ナニヲイイヤガリマシタカ? 「俺は半端な仕事はしねえ。使う時はパーッと使うべきだ。宝石はまとめて宝石商に売った。家も土地も売った。まあ、坊主の家に厄介になるから不便は無えだろ。あと、それでも足りない分は借金したから、ほれ」 そう言うとキャスターは、闇金として評判が悪い金融会社のチラシを真っ白になっている凛に手渡し、自分は持ってきたワインを飲みながら、観戦の続きをしている。 「あー、美味え。パトロンの金で飲む酒程美味い酒はねえや」 故に、大爆発寸前の凛に気づく筈も無く、飲み干したワインの空瓶を放り投げる。それは凛の頭に当たった。 「ありゃ、もう空か。しかたねえ、フロイライン。ちょっとそこの無人契約機で金出して」 「死ねや、コラアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 凛の鉄拳がキャスターの顔面に直撃し、そのまま回転しながら吹っ飛ばされたキャスターはビルから転落した。 「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア……」 肩で息をした凛は、戦闘中のビルを見ると、絶叫した。 「勝てぇぇぇぇぇぇ!!勝ちなさい!!衛宮君、バーサーカー!!勝たないと私がどうするか分かってんでしょうねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 遠坂凛の声が聞こえる。 遠いのでよく聞こえないが、どうやら勝利を願って激励してくれているらしい。 「……勝たないとな、バーサーカー」 「当たり前だ!勝って、聖杯を手に入れるのだ!!」 バーサーカーは意気込みも露わに、水流を操り飛行機からの銃撃を防いでいる。 年相応の元気な子供らしい表情を見せたバーサーカーの姿に、士郎はそれを頼もしく思いながら、バーサーカーの願いを思い出していた。 『朕(わたし)に、別に聖杯で叶えたい願い事は無い。しいていえば、聖杯を手に入れること自体が目的だな』 バーサーカーが、安徳天皇が、聖杯を手に入れることを切望しているのは、叶えたい願いがあるからでは無い。 正確に言えば、安徳天皇の願いは、『自分で何かを手に入れる』ことだ。 生前持っていた帝位は、自分で手に入れた物では無く、他者から与えられただけのものだった。 自分は幸せだったのだろう。国で最高の位に座り、三食が与えられ、多くの者達が最期まで守ってくれた。 だからこそ、自分は自分で手に入れた何かが欲しい。かつての生は紛れもなく幸福だったと、多くの人々に守られたこの身は決して無為な存在ではなかったと、胸を張って言えるように。 バーサーカーの叫びに、士郎は頷いた。 「ああ、聖杯は俺達の物だ」 「全く、頑固な対空砲火だ。いや、放水か?」 Ju87を操りながら、ライダーことハンス・ウルリッヒ・ルーデルは下から放たれる水の弾丸を回避していた。 凄まじい攻撃だが、ライダーは涼しい顔で回避していた。急降下爆撃のプロフェッショナルとして、無数の対空砲火をくぐりぬけてきたライダーにとって、この程度の弾幕ならば、それほど慌てるものでもなかった。 地上に目を落とす。 自分の戦友であるシンジは、既に遠く離れた場所に退避している。攻撃の頃合いだろう。 ―――床に身を伏せ、気色の悪い生物に嬲られる少女。 それが、ライダーが現世で始めて見た光景だった。 シンジからある程度のことを聞いたライダーは、当然元凶である怪老を斃そうとしたが、何を仕掛けているかわからない以上、シンジと共に聖杯を手に入れるしか、シンジも本来のマスターである少女もあの不気味な屋敷からは解放されないと理解した。 『あいつの為じゃ無いさ……だけど、それでも妹だからね。聖杯の力を少し分けてやるくらい吝かじゃないよ』 最初は戦いに怯えるだけだったあの少年も、今ではかつての戦友達と同じ、かけがえのない相棒となった。 ライダーは決意した。元々願いなど無く、ただ戦いを求めて召喚に応じた身だ。ならばこの身と、爆撃の技をもって聖杯を手に入れようと。その為なら泥でも舐めてみせると。 「聖杯は手に入れる。戦友とその妹を、妄執と狂気から永遠に解放するために」 飛行機が、急上昇し、そして急降下してくる。その動きに、士郎とバーサーカーは息をのんだ。 それこそ、ペリシテの巨人を一撃で葬り去ったライダーの絶技―――!! 「急降下爆撃!!」 「『空の魔王(カノーネン・フォーゲル)』だ。そのビルなど、ひとたまりも無い。仮に爆撃に持ちこたえたとしても、地上までの自由落下に耐える事はできない……さらばだ。東洋の皇帝と、マスターの少年よ」 爆弾が全て投下され、一斉に屋上の敵を狙う。 悪魔のサイレンと共に飛来してくる爆弾を見ながら、バーサーカーは自らの宝具、『水天宮草薙剣(すいてんぐうくさなぎのつるぎ)』を構えた。 「士郎!ゆくぞ!」 声色には僅かに緊張の色が混ざり、身体は強張っている。それでも両眼は空を見ていた。 そんなバーサーカーを見て、士郎は剣を構えている手に、自分の手を重ね合わせる。 「大丈夫、できる筈だ」 その言葉に、バーサーカーは花のように笑った。 「当たり前だ!」 構えている剣から湧き出す魔力が霧となり、周囲を白色に包む。魔力の集束は必要無い。『解き放て』ば、全ては終わる。自らの魂に刻まれた八岐大蛇の因子と、血に刻まれた天照大神の因子を合一させ、生まれる力を全て神剣に流れ込ませる。 想像するは、かつてこの剣に名を付けた日ノ本最強の武人、創造するは、その英雄がかつて振るった至高の一撃。 今にも衝突しようとする上空の爆弾と、『射線』上にいるライダーの機体目がけて、振り下ろす。 真名開放に、バーサーカーと士郎、二人の声が重なった。 「「『天叢雲(あめのむらくも)』」」 ―――かくして、神話の蛇は再び現世に顕現する。 「!?」 空中に出現した洪水。 ライダーにはそうとしか言いようが無かった。濁流は爆弾に衝突すると、爆風全てを吸収、いや、かき消した。 そして、八尾に枝分かれした水流は、四方八方からライダーを屠りにかかる。 「戦略兵器も持っていたのか。参ったな」 だが、危機的状況にあくまでライダーの口調は軽い。機体を操り、水流から逃げにかかる。 そして、水流八尾の隙間から、屠るべき敵の姿を垣間見た。 濁流の間隙を縫って飛ぶ。攻撃の全てをスレスレで躱し、或いは機体の一部を犠牲にして飛び続ける。 そして、銃弾の有効射程距離に接近した。 「貴方達と戦えた事は、英霊(エインヘリャル)の誇りだ。全てが終わったら、ヴァルハラで酒を酌み交わそう」 敵への敬意を持ちながら、ライダーは引き金に手をかける。 そして、気がついた。 「あんたは強いよ。ハンス・ウルリッヒ・ルーデル。だけど、あんたの負けだ」 ライダー迎撃の作戦は、二撃目が存在する。一撃目の『天叢雲(あめのむらくも)』、そして。 士郎は、濁流を抜けてきた飛行機に向かって、投影した剣を引き抜く。 それはごく普通の十字剣として生まれ、担い手となった王の心と、聖地奪還に燃える騎士達の思いによって聖剣となった剣。異教徒殺しの宝具。それを一度目にした衛宮士郎の投影によって、それは今彼の手にある。 「『獅子吼する―――勝利の剣(エクスカリバー・ライオンハート)』!!」 聖光が、敵機を包み込み、夜空に一つの太陽が生まれた。 「……ふう、やれやれ。今度の戦争はこれで終わりか」 ビルの屋上に倒れ伏したライダーは、無傷で立つバーサーカーと士郎に一瞥を送ると、上空を見上げた。 夜空を見上げるライダーの下半身は既に消滅している。霊核も損傷しているのであろう、最早動くこともできそうにない。 「あの攻撃がフェイントで、マスターの攻撃が本命だったとはなあ」 呑気そうに笑うライダーに、士郎も口を開いた。 「総攻撃をかいくぐって安心したところを、獅子心王の剣でとどめを刺す。あんたを倒すにはこれ以外なかった」 「宝具の二段重ねを使わなければ撃墜できないとまで、思わせるとは、私も偉くなったもんだ」 その時、屋上の片隅から聞こえた足音に、意識がそちらの方を向く。 「……ライダー」 姿を現した慎二に、ライダーはそれまでとはうって変わって沈痛な表情を形作った。 「ああ、畜生、口惜しいな。シンジ達を空に解き放つ事が出来なかった……シンジ、すまない、すまなかった」 「何言ってんの、馬鹿野郎」 英霊の心からの謝罪に、慎二は傲岸に笑った。 「お前がいなくても、僕はやっていける。僕はお前がいなくても大丈夫だ。桜だってどうにかしてみるさ。だから……笑って逝けよ。『戦友』」 慎二のその言葉に僅かな沈黙の後、ライダーはフッと微笑んだ。 「そうか……そうだな、さらばだ戦友、ジークハイル」 「ああ、あばよ。ハンス・ウルリッヒ・ルーデル、僕のサーヴァント。ジークハイル」 そこで、ライダーは完全に消滅した。それまで見届けると、慎二は笑顔のまま涙を流す。 「僕はまだ戦う。宿命と戦ってみせる……衛宮、攻撃したければ、やれよ」 士郎は、無言で背を向けた。そして一言だけ呟いた。 「いつか、皆が笑っていた場所で待っている」 そのまま歩き出す士郎を追う前に、バーサーカーは慎二に向き直る。 「当然、そこにはお前もいる筈だぞ」 そのまま、霊体化し消えた。 自分以外いなくなったビルの屋上で、慎二は空を見上げていた。ライダーが自分を乗せて、翔けた空。 「あいつは、いつか桜も乗せたい、って言ってたよな」 慎二は歩き出す。目指すは間桐の屋敷、呪われた我が家。 「僕は気が短いんだ。いつかなんて、待ってられない。早く、早く、一刻も早く、僕らは自由になる」 歩く道程は険しく、遠く、それでも誇り高く少年は第一歩を歩き出した。